第59話 新宿
12月17日水曜日
朝5時に涼葉のスマホのアラームが鳴る。
「うーん、」寝ぼけながら涼葉はアラームを止める。
そして、乱れた寝巻きを着て寝ているうるはを見つける。
うるはは水曜日にレポートをやるつもりだったが昨日涼葉がやってくれたのでやらなければいけないことはなくなったと言ってた。
起こしたら可哀想かと思って軽くキスだけをしてベッドから降りる。
着替えてから高梨家の人たちを起こさないようにそっと階段を下りた。
うるはは涼葉が起きたのはなんとなく分かっていたがバイトの疲れなどもあり反応できなかった。
7時くらいになると陸翔も入ってきたようだが気にせず眠る。
起きたのは10時を過ぎたあたりだった。
寝巻きのまま大きく伸びをする。
うるはの健康的なおなかが見える。あらやだ、とお腹を隠す。
今日は1日フリーかぁ、そんなことを考えながら洗面台に行き顔を洗う。
1階に下りるとテーブルにロールパンとイチゴジャムがあった、イチゴジャムは好物なので少し嬉しくなりながら塗って食べる。
自分の部屋に戻るとまずはお兄ちゃんにチャットを送る。
‘今日は何してるの?’うるは
多分すぐには返信はないだろう。
来夢は学校のある木曜日は仕事を休むが後の休みは不定期らしい。
連絡をしてみたいが夢奈のことを考えると気軽に連絡はできないのかなとも思えた。
進路かあ・・・涼葉と母親の会話を思い出す。
絵を描くのは好きだ。
でも美大に行ったり美術系の専門学校に行ったりしてそれを職業にまでできるのだろうか。
自分にはそこまでの能力も熱意もないように思える。
大学に行くために勉強するのもめんどくさそうだし、専門学校に行って就職すればいいかな、などと考えてとりあえず落ち着いた。
‘今日の午後から時間あるけど高梨は新宿まで来れる?’来夢
ベッドの上でポテチをつまんでいると来夢から着信があった。
少し悩むが
‘うん、時間あるよ!何時くらいに行けばいいの?’うるは
‘3時に新宿駅西口の駅の下にある交番の所に来てよ’来夢
‘はーい!分かった’うるは
時間はまだ11時40分だった。
2時に出れば待ち合わせには間に合うだろう。
クローゼットを開けてデート服を選ぶ。ハクにも手伝ってもらう。
今日のコーデは
黒の厚底ブーツ
肌の色が分かる程度に黒いタイツ
短めの黒のショートパンツ
白いニットのセーター
明るいキャメル色のハーフコート
ワインレッドの小さめのカバン
黒のロシア帽
となった。
鏡の前に新聞紙を敷いてブーツで立ってみる。
何回か回転してみたり腕をクロスさせたりポーズを取ってみる。
「70点くらいにはかわいいよね??」
‘100点だようるは’
「ありがとうハク、ちゅっ」
化粧もあまり派手にならないくらいで抑えた。
時間を見るとまだ1時を少し回ったところだ。
せっかく着替えたからとそのまま家を出る。
西巣鴨で都営三田線に乗り、1駅乗って巣鴨で山手線に乗り換えて新宿駅に着く。
待ち合わせの時間まで1時間くらいある。
新宿駅の東口の方に出て通行人のファッションチェックをしつつショップを見て回る。
この前遊んだ渋谷とは違う服装で参考になった。少し落ち着いた感じなのかも?
「1人なの?」と声をかけられたり
大きな街はこれだからとため息が漏れる。
そのうちに時間となったので西口交番前に行き来夢を待つ。
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