Data.8 斬り捨ての報酬
「いろいろ説明してくれてありがとう。まだ完全にシステムを把握できたわけじゃないけど、大事なことを知ることが出来たよ」
「いえいえ、そんなお礼なんて! いきなりダラダラ説明してすいませんでした! 今すぐにシステムのすべてを理解する必要はないと思いますからご安心を!」
うるみは白くて長い髪を振り回して何度も頭を下げる。なんだかヘッドバンキングを見てるみたいだ……。
「ただ、今回の戦闘で何を得たのかは早めに確認しておいた方がいいと思います。説明した通り、罪人であるズズマを倒したトラヒメさんには彼が所持していた装備か技能、そしてお金が2500両入っているはずですからね」
「そうね、早速この場で確認して……ああっと、そういうのってどこで確認すればいいのかな?」
「自分の情報を知りたい時は、まずステータスウィンドウを開けば間違いありません。『ステータス』と心の中で念じたり、口に出したりすればいつでも開くことができますよ」
「ありがとう。早速やってみる」
ステータスと念じて虚空に手をかざす。すると、ビュインと音を立てて目の前に半透明のウィンドウが表示された。最初の画面には私の今の状態が表示されている。
◆基本情報
名前:トラヒメ
状態:正常
体力:■■■■■■
念力:■■■■■
……ん?
鹿に削られた体力ゲージが回復しているし、なんなら目盛り1つ分増えているような……。まあ、減ってるよりかはいいか。
「ステータスにはいくつかのタブがあって、現在所持している装備を調べたいなら『装備』のタブを、技能を調べたいなら『技能』のタブを選択するといいですよ」
うるみに言われた通り、まずは『装備』のタブを開いてみる。しかし、そこには最初から持っていた見習いの刀しか表示されていなかった。
「装備タブに新しいものがないとしたら、技能を奪っているということですね」
次は『技能』の項目をタッチしてみる。そこには【
「なんか2つあるみたいだけど……」
「ゲーム開始と同時に、最初に選んだ武具に対応した技能を1つ与えられるんです。もしかして……知りませんでした? 技能なしでズズマを倒したんですか!?」
「あー、それを知らなかったのは事実だけど、技能はこの
「これって……どこで手に入れたんですか?」
「森で襲いかかってきた鹿を倒したら出てきた」
「それってきっと
「あ、ありがとう……」
とりあえず、ゲーム開始と同時にもらった技能が【虎影斬】だと思う。だって、私はトラヒメだもん。この技能は私の名前を考慮したうえで与えられたとしか思えない。
じゃあ、奪った方が【体力増強Ⅰ】か。【虎影斬】に比べると地味な名前しているし、数字の『Ⅰ』が使われているということは、上位互換の技能がいくつもありそうね。
「どうやら奪ったのは【体力増強
「えっ!? 【体力増強】ですか! それもまたレアな技能じゃないですか!」
「そ、そうなの……?」
「はい! 結局このゲームは敵の体力を0にするか、自分の体力を0にされるかの勝負なので、その体力を増やせる技能はどんな戦闘スタイルでも腐らない超便利な技能なんです! いやぁ、私も欲しいなぁ~」
確かにRPGで体力が多くて困ることなんてないはずよね。体力なんて概念のない『VR居合』とは違って、『電脳戦国絵巻』では体力は勝敗に直結する要素なんだ。それをゲーム開始早々増やせるなんて私は運が良い!
無知だったとはいえ、さっきはハズレ扱いしちゃって【体力増強Ⅰ】には悪いことしたな。でも、これからは存分に活用させてもらおう。
「いろいろ教えてくれてありがとう。おかげで助かったよ、うるみ」
「お役に立てならよかったです! 長話になりましたけど、最後に1つだけ覚えておいてください。あのズズマという男……今回は単独行動でしたけど、普段は『隙間の郎党』という
「了解! あっ、最後に私も質問いい? ツジギリ・システムを発動しているプレイヤーを返り討ちにしても、罪にはならないってことでいいんだよね?」
「はい。発動しただけで罪が生まれることはありませんが、発動した時点で誰に倒されても文句が言えない状態にはなります。返り討ちにすれば、普通に装備か技能を奪うことも出来ますよ」
「ふふふ……いいこと聞いちゃった」
どうやら人を斬る機会に困ることはなさそうだ。『電脳戦国絵巻』を遊ぶモチベーションがみるみる高まっていくのを感じる!
でも、今日はここまで!
うるみと別れた後、私はすぐに『電脳戦国絵巻』からログアウトした。引き際も見極めることもまた勝ち続けることに必要な能力なんだ。
◇ ◇ ◇
☆現時点のステータス
◆基本情報
名前:トラヒメ
状態:正常
体力:■■■■■■
念力:■■■■■
◆装備
武具:
防具:質素な着物
装飾:――
◆習得技能
【
◆装備技能
【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます