親友との再会


「……春人?」

「冬夜……か?」


 隣で綾香が困惑しているのを横目に俺は春人の顔を見る。


「お前何してんの……?」

「俺は今度の体育祭に向けて運動ぐらいしようかと、お前もか?」

「まぁ……そうだけど」

「というか隣の子は彼女か?」

「……そうだな」

「へぇー!!可愛い子じゃん!!」

「そうだろ」

「なんでお前が自信ありげなんだよ」

「自慢の彼女だからな」

「……あ!もしかして高校の時に言ってた子?」

「正解」


 高校の時に一部の人には俺には好きな人がいることを伝えている。春人もその1人だし思い出してくれたのだろう。


「ねぇ、冬夜くん」

「どした?」

「あの人が春人……さん、なんだよね?」

「そうだな」

「なんかイメージと違うよ?」

「そうか?」

「昨日の話から想像するに、ちょっとうるさめの人だと思ってたんだよね」

「うん」

「でもどう見ても爽やかイケメンじゃん!」


 確かに春人は爽やかイケメンかもしれない。けどそうじゃないんだよな。中身がわかるとただの残念イケメンになるんだ。言動もそこそこ落ち着いてるし、見た目も所作も十分、だけど1歩踏み込めば一気に残念さが際立ってくる。


「で?冬夜、お前は彼女とデートでもしてるのか?」

「どうみたらデートに見えるんだよ」

「彼女と公園で弁当食ってたらそう見えるだろ」

「服装がどう見ても運動する用だろ」

「……運動デート?」

「あってたまるか!」


 なんで運動デートなんてしなくちゃいけないんだ。運動するって目的があるならいいと思うけどそれをデートにしたくはない。


「はぁ……とりあえず説明するからそこに座れ」

「おう!」






 春人に説明すること20分程。昼ごはんを食べつつだから時間が掛かったがあらかたの説明は終わった。


「なーるほどなー」

「理解したか?」

「お前がとんでもないヘタレってことはわかった」

「なんもわかってねぇじゃねえか」

「いやいや、普通こんな可愛いこと同棲してたら手出すだろ!」

「相手高校生だぞ?出せるか?」

「いやー……出すね」

「普通はしない」

「相手によるけどその子なら我慢とか無理だって」

「ねー、普通は手出してくれるよねー」

「なー」

「気を合わせるな」


 綾香的には春人の考えた方が普通だから同調したくなるのもわかるけどやめて欲しい。俺が異端みたいになっちゃうからな。……後ちょっと嫉妬する。


 そんなことを考えたからか無意識に綾香を抱き寄せてしまう。


「わっ」

「……お?」


 突然抱き寄せられた綾香がそれに耐えれるわけもなくポスッと音をたてて俺の太ももに倒れる。


「おー、イチャついてくれるなー」

「違っ……あーもう!」


 自分のやらかしに少し苛立ちつつそれを隠すように綾香の頭を撫でる。すると綾香が俺の足の間に顔を埋めるように移動する。


「……綾香?」

「今絶対変な顔してるからダメ」

「……すまん」

「お前いつもそんな感じなの?」

「……そんなことはない」

「冬夜くんはいっつもこんな感じだよ」

「綾香さん!?」

「へー、やっぱ冬夜はそういうタイプだったんだな」

「どういうタイプだよ」

「彼女出来たら無限に甘やかすタイプ」

「……否定出来ないな」


 実際綾香のことはたくさん甘やかしてあげたいし、出来うる限りのことをしたい。というかそういうものだと思ってる。


「まぁ冬夜のそういうとこ見れて俺はよかったよ」

「なんだその顔」

「親友がようやく落ち着けて安心してる」

「……そうかよ」

「冬夜はずっと忙しそうだったからな、こういうのみたら皆俺みたいな反応すると思うぜ?」

「そんなだったか?」

「ああ、心ここにあらずというかずっと目的の為に動き続けてるイメージだったな」

「もしかして結構悪く見えたか?」

「なんも知らなかったらそう見えたかもな」

「あー……それはすまん」

「いいよ、普段こっちが助けられてたんだし。それぐらいのフォローはするさ」


 自分の行動をこう振り返ることがなかったからか少し恥ずかしい。それに人から見るとこう見えてたんだなって思うと申し訳なさも出てくる。


「冬夜くんは私の為に頑張ってたんだよね?」

「そうだな」

「そう考えるとすごいな冬夜」

「だから……ありがとっ」

「──んっ」


 先程のお返しとばかりにキスをされる。春人がいるからほんの一瞬唇が触れる程度だったがそれでも綾香の気持ちは伝わってくる。


「こうやってお返ししか出来ないけど……」

「そんなことないよ、綾香がいてくれるだけで俺は嬉しいから」

「そう?じゃあ出来るだけのお返し頑張るね」

「その分俺は綾香のことを甘やかすよ」

「それじゃあ意味無いじゃん」

「俺がしたいからいいんだよ」


 あっという間に綾香とイチャつき始めるとため息が飛んでくる。


「俺の事忘れてね?」

「「あ」」

「すげぇよ2人とも」

「冬夜くんがカッコイイのが悪いもん」

「綾香が可愛いのがいけないんだよな」

「どっちもだよ!」


 春人に突っ込まれて綾香と顔を見合わせる。一瞬の間を置いて2人で笑う。


 こういう時間もいいなと気づいてしばらく綾香と抱き合ったままでいた。春人は知らん。

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