ゆったりイチャイチャ
綾香が風邪を引いた翌日、俺は仕事を休みにして貰った。綾香も念の為休むことを学校に伝えていて今日は2人でゆっくりする予定だ。
「冬夜くんあったかいね」
「暑くないか?」
「冷房ついてるしちょうどいいぐらいだよ?」
「それならいいけど、暑かったら言えよ」
「うん、ありがと」
「一応病み上がりなんだしな」
そう、綾香は病み上がりなのだ。今日の朝起きたら抱きしめていたはずの綾香が家事をしていたことに驚いた。それぐらい元気になっていたのはいいことなんだけど頼むから病み上がりの時にいきなり動き回るのはやめて欲しい。こっちが心配で仕方ない。
「今日は1日こうしてたいねー……」
「ずっと抱きしめられたままでってこと?」
「だって幸せなんだもん」
「俺もそうしてたいけどな、残念なことにもうお昼だ」
「冬夜くんのけち」
「綾香を背負って家事をするわけにはいかないからな」
「子供だったらしてくれた?」
「そしたら付き合ってなかったかもな」
「……いじわる」
綾香が俺の方に向き直ってキスをしてくる。これがいじわるをした罰なら受け入れなきゃな、と思い綾香に身を委ねる。何度も啄むようにキスをされてようやく落ち着いた時には綾香は俺の上から下りていた。
「一緒にご飯作るならいいよね?」
「当然」
「何食べる?」
「楽にしたいから素麺かな」
「じゃあ私付け合わせ用意するね?」
「じゃあ俺は麺を茹でとくよ」
それぞれ役割をわけて調理を始める。
「あっ」
「どした?」
「素麺だったら食べさせあいできないじゃん」
「……一緒にいれるオクラでもあーんするか?」
「なんか悲しくない?」
「じゃあちょっと食べれるもの作るか」
「素麺に合うのってなにかな」
「玉子焼きとかじゃないか?」
「玉子焼きは大体なんでも合うもんね」
「じゃあ一緒に作っとくわ」
「お願いね」
素麺を茹でる傍ら玉子焼きを焼く。綾香が隣でトントンと調子よく夏野菜を切って盛り付けていく。9月とは言えまだまだ暑い。素麺に夏野菜の組み合わせはさっぱりしていておいしいだろう。
調理自体はすぐに終わるってそれぞれ盛り付けて配膳する。綾香にはなるべく動いてもらわないように俺が大体の配膳をした。
「「いただきます」」
ズルズルと素麺を啜り、時々野菜や玉子焼きを頬張る。うん、今日の玉子焼きもうまく焼けた。
「おいしいね」
「ん、さっぱりしてて食べやすい」
「素麺苦手なのは克服できた?」
「……それは無理かもしれない」
「ゆっくり克服すればいいと思うよ」
「そうだな」
付け合わせを色々と変えながら素麺を食べる。綾香を方をチラチラとみているがいつもより食べる量が少ないのでやはりまだまだ本調子ではないのだろう。
少ししてお昼ご飯は終わり俺は食器を食洗器にいれる。いつもは使わないが今日は綾香と一緒にいたいから使ってもいいだろう。
ソファに座ってクッションを抱えている綾香の隣に座る。するとすぐに肩に頭を預けてくる。
「眠いか?」
「ちょっとね……」
「寝てもいいぞ」
「うん……でもせっかくだから冬夜くんと一緒にいたい……」
「それはいいけど無理はするなよ。まだ本調子じゃないだろ」
「う~……」
「ほら、どうせ寝るならベットに行こう」
「……うん」
食後すぐ寝るのはよくないから部屋に移動して寝るまで座らせておきたいしな。眠そうにしている綾香の手を握り歩く。
「……冬夜くんの部屋で寝たい」
「俺の部屋?」
「うん」
「まぁ、いいけど……」
綾香に引かれるようにし部屋に行きそのまま一緒にベットに入る。
「えへへ……冬夜くんの匂いだ……」
「じゃあ俺は綾香を堪能させてもらおうかな?」
「いいよ、じゃあこうしてあげるね」
綾香の胸に顔をうずめさせられ、途端に綾香の匂いと体に全身が包まれる。柔らかい綾香の体の感触が伝わってきて幸福感が満ちていく。
「冬夜くん、一緒におねんねしようね~」
まるで保育園の先生だな、というツッコミを飲み込む。眠い時の綾香はいつもこうなる、母性がますのか素が出ているのかわからないが。
どちらにせよ綾香は幸せそうだし、俺も悪くないと思ってしまっているから問題ないだろう。
「ふふ、冬夜くんは可愛いね」
喋っても綾香の胸に顔をうずめているせいでモゴモゴとしか喋れない。息はできるけどするたびにどんどん思考が綾香に侵食されてどんどん抵抗する気が失せていく。
「いつも頑張ってくれてありがとう」
おそらく綾香は寝て起きた頃には覚えていないんだろうな、と想像する。その言葉になんだかむず痒くなる。
「いつか、私から冬夜くんにお返しするから待っててね」
それを機に綾香の呼吸が一定のリズムになって次第に寝息が聞こえてくる。
俺も眠気が襲ってきて徐々にそれに抗えなくなる。綾香に包まれて、きっと幸せな夢を見るんだろうな、とか快眠だろうな、とか考えているうちに俺の意識は溶けていった。
夕方になって起きるまで俺達はお互いに抱き合って睡眠をむさぼっていた。
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