従姉弟との関係
「───それにしても綾香ちゃんやっぱり可愛くなったね~」
「そういう花梨さんも綺麗ですよ」
「綾香ちゃんほどじゃないよ~」
困惑の中晩御飯を食べ終えて俺と綾香は風呂に入って(花梨さんはどちらも終わらせてから来たらしい)リビングに集まって話そうとしたんのだが……まぁ女性同士話が始まってしまった、というわけだ。
2人はすでに1時間程話していて俺はもう必要ないんじゃないかとさえ思い始めていた。家主なのだからいなきゃいけないし話してを進めないといけないのだが。
「あー、そろそろ本題に入っていい?」
「あ、ごめんね。つい話し込んじゃった」
「いや、それはいいんだけど……ほんとよく話せるよな」
「話すことはいくらでもあるからね」
「そうそう、ずっと花梨さんとは会ってなかったし」
「そういうもんか……それでだ、花梨さんは今日から泊まるんだよな?」
「そうだよ」
インターホン越しにも言われたけどほんとに今日から泊まるらしい。これは先ほど母親にも電話をかけて知った。綾香の時もそうだったため流石に口調が強くなったがこれぐらいはいいだろう。部屋に関しては対しても物も置いていない物置になっていた部屋を整理して布団を敷くことにした。それは土日になるだろうからそれまでは違う場所で寝てもらうけど。
というようなことを諸々説明して一度話を区切る。
「それで私はどこで寝るの?」
「暫くは綾香の部屋で寝てください。俺のベットを使わせるわけにもいかないし」
「それじゃあ綾香ちゃんは?」
「綾香は俺の部屋で寝てもらいます」
「ほんと!?」
綾香の歓喜に満ちた声はスルーして話を続ける。
「ん?じゃあ冬夜は?」
「俺はソファで寝ますよ。綾香の時もそうでしたし問題ないです」
「それは悪いから私がソファで寝るよ?」
「いや俺が寝るんで花梨さんはベットを使ってください」
「でもそれは──あ」
「どうしたんです?」
「2人って付き合ってるんだよね」
「「えっ」」
「え?違った?」
一瞬にして冷や汗がぶわっと溢れでる。そして思考が一気に加速する。いつ気づかれた?いやそもそも俺達は何をしてた?花梨さんが来てからの行動をすべて思い返す。しかし違和感はない。寧ろいつも以上にいつも通りだった。なぜ気づかれた?
その疑問は花梨さんからの言葉ですぐに明らかになった。
「だって雰囲気が恋人のそれだよ?距離感とか会話の感じとか、というか最初夫婦かと思ったもん」
「ふ、ふうふ……私と冬夜くんが夫婦……うへへへ……」
「おい、綾香落ち着け。そしてその想像を止めてくれ」
明らかにとんでもない想像をしている綾香を止めて先程の花梨さんの言葉を思い返す。確かに俺たちの普通は花梨さんから見れば夫婦のそれだったのだろう。これに関しては考えずともわかる。普通に家事を一緒にこなして、お風呂の相談して、その時にちょっとからかったりして……これが夫婦でなくてなんだと。
「綾香、爺さんとこ行くときには気を付けるぞ」
「え?どうして?」
「初日の晩御飯の時に俺から言うからそれまで全力で隠す」
「確かに、自分から言った方がいいもんね」
「だろ、だから頼む」
「任せて!こっちに来たばっかりの頃の私を再現するよ」
「俺もそうする、というか思い出す」
「……なんかお姉さんの知らないとこで才能が無駄に使われてる気がする」
2人して全力で隠す方向にもっていく。俺達が全力で取り組めばこの程度なんとことはない。もはや脅威にすらならないだろう。
「あ、花梨さんに1つ質問いいですか?」
「なにかしら、綾香ちゃん」
「花梨さん冬夜くんを狙ってたりしませんよね?」
「……しないよ。最初はちょっと考えてたこともないけど、2人を見てたらそんな気もなくなっちゃた」
「ならいいです」
「だから綾香ちゃんには沢山女の子の武器と冬夜の弱点を教えてあげるわね」
「冬夜くんの弱点!?」
「そ、お姉さんに任せなさい!」
「頼りにしてます!!」
気づけば本題からそれて俺たちの事情を話していることに気づき俺は本題に戻す。
「それで、花梨さん。俺達が付き合ってたらなにがいいんです?」
「そうそう、2人が付き合ってるなら一緒のベットで寝ればいいんじゃない?」
「「あっ」」
完全に盲点だった。そうじゃん、散々一緒に寝てるんだし一緒に寝ればいいじゃん。
「思いつかなかった……」
「私も考えてなかったよ……」
「というかとっくに一緒に寝てるものだと思ってたんだけど」
「そんなことないですよ」
「年頃の男女が同棲して付き合ってるなら普通は……ねぇ、ヤるでしょ?」
「普通ならね」
「普通だったらの話ですけどね」
俺と綾香は2人で関係性のめんどくささというか、ややこしさを説明する。途中から花梨さんがもうやめてみたいな顔をしてたけど気にせずに。
「わかった、わかったからもういいわ。お腹一杯」
「なにがそんな満たすんですか」
「2人とも甘すぎてちょっとお姉さんには刺さります」
「……独身だからですか」
「うぐっ」
「花梨さん相手いないんですか」
「いないよ……仕事だけできて家事出来ない私に相手なんていないよ……」
「大学の先生なんでしょ?いないんですか?」
「平然と学生に手を出させようとするね!?」
「俺がそうなんで」
「あぁ……」
「あー……そういえば花梨さんショタコンでしたね」
「……はい」
「しかも子供の頃から」
「…………はい」
「だから俺のお世話たくさんしてきたんですよね」
「………………はい」
「なんで冬夜くんがそんなこと知ってるの?」
「酔った勢いで正月に教えられた」
「それは……きつくない?」
「きつかった」
「もうやめてぇぇぇぇぇ!!」
クッションを抱えてソファの上を転げまわる花梨さん。その様子が可笑しくて俺達はそろって笑う。ひとしきり笑って落ち着くまでそれは続いた。
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