冬夜の苦悩
花梨さんが来て慌ただしくなりいつもより寝る時間が遅くなってしまったが起きる時間は変わらないので眠気を我慢しつつ俺は洗濯を回す。
「ふぁ……」
あくびを嚙み殺せず漏れ出てしまう。俺がこれだけ眠いなら綾香は大変そうだなとなんとなく思う。それにもっとやばそうな花梨さんもいるんだ。多分だけど花梨さんはまじで起きないと思う。ただでさえ寝起きが悪いのに夜更かししたんだ。叩き起こすことも覚悟する。
「……それよりも弁当だな」
今日から少しの間3人分の弁当を作ることになる。それに伴って調理時間も少し増えるだろうし、毎日の献立も調整しないといけない。ただ俺はそれを考えるのが好きだから問題ではない。寧ろ楽しいぐらいだ。そんなこともあって朝ご飯と弁当を作る時間はいつもよりも楽しかった。
弁当を作り終わりそろそろ2人を起こす時間になったので俺はそれぞれ起こしに向かう。まずは確実に起こせる綾香から。
「綾香-、朝だぞー」
ドア越しに呼びかけるも当然返事はない。予想していたことなので俺は部屋に入って綾香に直接呼びかける。
「おーい、朝だぞー」
と呼んでみるけど起きる気配はない。いつもなら身じろぎなり、声を出すなりするがそれすらないとは……
「さっさと起きないと困るし……」
このまま呼びかけるのは面倒なので確実に起こす手段を使う。
「起きろ、綾香。じゃないと襲うぞ」
「ふぁい!?」
飛び起きた綾香を綺麗にかわす。よけなければいつぞやのように頭突きを喰らうとこだ。
「あれ……冬夜くん……?」
「朝だぞ、適当に起きて来いよ」
「う、うん……」
どこか納得いってない綾香を放って俺は部屋をでる。次は花梨さんだ。
今度はドア越しで起きないのはわかっているため最初からノックして部屋に入る。
「花梨さん、朝ですよ」
まぁ当然起きるわけもなく眠りこけている。というかあんまり無防備な格好で寝ないで欲しい。
花梨さんは俺より一つ上ということもあって体は成長しきっている。少し見えるだけでも見て取れる手入れのよさには感服せざるを得ない。花梨さんはモデル体型とでもいうのだろう。スラっとしていて背も高く、伸ばした髪は一切の引っ掛かりを見せない。そんな花梨さんは夏場だからか、かなり薄着でなというか色々と見えている。なにが隠せてるの?って感じだ。
寝る前にはタオルケットなりを羽織っていたんだろうけど、持ち前の寝相の悪さでそれはベットの横に落ちている。そのせいで全身が見える。なにをもってベビードールを着て寝ているのか知らないけどそのせいで下着がモロに見えている。というか上を付けていないため、言葉通り全部見えているのだ。
ここまで言っといてなんだけど俺は一応そちらに目を向けないようにしている。部屋に入った瞬間にそういう格好というのは見えたし。ていうか昨日の晩に来てたパジャマはどこにいった?
「とりあえず起こすか……あんまり居たくないし」
ショタコンであるというその性癖を有効活用するべく動画サイトから適当に動画を漁る。それを耳元に近づけようとした時、花梨さんが大きく寝がえりをうつ。ただでさえベットの端にあった体はそれによって虚空へと放りだされる。そして地球の法則に基づいてその体は落下。
要するに、このいい年した大人は寝がえりをうってベットから落ちたのだ。それもゴンッという衝撃と共に。
「う~~~」
いたた……という感じに頭をさすりながら体を起こす。ここまではまだよかった。なんというか花梨さんだな、で収まる範疇だったのだ。しかしこの後の行動は完全にアウトだった。
花梨さんは自分の下着に手をかけたのだ。理由なんて知る由もない。花梨さんがつけている下着は下半身のそれだけ、つまりそれを脱ぎだしたのだ。
あまりのことに俺はその場から動けなくなってしまうがすぐに理性を取り戻して部屋を出る。
「なに考えてるんですか!?」
そんな絶叫と共に俺は部屋を出た。その直後に悲鳴が聞こえた気がしなくもないけど俺は知らない。あんな変態なんて知らないと言わんばかりに朝ご飯を作るのに集中した。
ちなみにだけど何も見えなかったということだけは言っておく。俺に背を向けてくれてたのは本当に助かった。本当に助かった。
「冬夜に全部見られた……」
「状況聞く限り冬夜くんそこまで悪くないですからね?」
「うるさい、リア充」
「急にナイフ刺してきますね」
「だってぇ……一番ダメなとこ以外全部見られたんだよ?」
「そもそも隠してない花梨さんが悪いと思います」
「だって寝る時に服邪魔なんだもん」
「下着はともかく服は着て下さい」
「本当なら全部脱ぎたいのに……」
「冬夜くん、ガムテープ持ってきて。もうこの変態黙らせる」
「まぁ落ち着け」
そう言ってプリンを綾香に食べさせる。それだけで何事もなかったかのように笑顔になり、もう一口とせがんでくる。……切り替えすごすぎない?さっきまで歴戦の暗殺者ってぐらいの殺気だしてたよ?
「花梨さんは今後俺と生活してるってことを忘れないでください」
「……ふぁい」
「今日見たものは全部忘れるんで」
「……覚えててもいいんだよ?」
「……どうやらまだ寝ぼけてるみたいですね。綾香フライパン持ってきて」
「任せて。この際私の冬夜くんを誘惑するサキュバスを退治しよ」
「本当にすみませんでしたぁぁぁぁ!!!!!」
花梨さんが椅子から飛び降りて土下座する。モデル見たいな人がそんな風に土下座するのはちょっと面白かった。あと開いちゃいけない扉が開きそうになった。
……綾香は容赦なく背中踏んでたけど。
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