綾香と勝負
夕方までみっちりと勉強をして詩乃ちゃんは帰った。送ろうかと提案をしたけどどうやら近くまで迎えが来ているらしいのでやめておいた。そこまで送るのも考えたけど俺がいるとちょっとややこしいことになるだろうしそれもやめておいた。
というわけでお泊りの片付けをもろもろ済ませ、晩御飯も終えて俺は今湯舟に浸かっている。綾香は先に入ったので多分今頃アイスでも食べているんじゃないだろうか。勉強の疲れもあるだろうし。
「ふぅ……」
大きく息を吐きだして疲れも溶け出させていく。テスト問題の作成が思ったより疲れとしてたまっていたのかしばらく湯舟から出る気になれない。
テストのことからこの2日のことを思い出していく。けどすぐに今日の朝の出来事に思考を埋め尽くされてしまう。未だに体は綾香の感触を覚えていて鮮明に思い出すことができる。綾香の体の感触、主に胸の感触が忘れられなくて湯に浸かっている火照りとは別の熱さがこみあげてくる。
「夏休みが不安だな……というか爺さんところでやることがあるし……」
そう文化祭やらで記憶の片隅に追いやられていたけど俺は爺さんとの勝負をしなきゃならない。やるのは葉山さんだけどあの人もかなり強い。昔は勝率が半々ぐらいだったけど今はどうかわからない。電話では強気に言ったがここ数年そういった遊びに触れていなかったぶん感覚もかなり鈍っているだろう。時間は一か月もないし早く取り戻さなきゃいけない。
とりあえず綾香に相手をしてもらおうと決めて俺は湯舟から出た。
リビングに行くと案の定テーブルには食べ終わったアイスのカップが置いてあって綾香が紅茶を飲みながら勉強をしていた。風呂にいた時間が珍しく長かったしアイスも食べ終わったのだろう。
「ちょっとキリがついたら頼みごとがあるんだけど」
「ん、ちょっとまってね」
数分もすれば綾香はノートを閉じていいよ、と言ってくれる。
「ちょっとの間俺と勝負してくれない?」
「いいけど……なんの?」
「えっと、将棋とチェスと囲碁の三つかな」
「……私の知らないとこでおじいさんとなにかしてるんだね」
「……まぁな」
「私がどうこういうことじゃないから深くは聞かないよ」
「ありがと」
「それでその3つで冬夜くんをボコボコにすればいいの?」
「感覚を取り戻すとこからだからな、頼む」
「おっけー、昔のようにはいかないことを見せてあげる」
リビングに置いてあるノートパソコンでそれぞれを起動して準備をする。
「
「おう」
爺さんとやる時はいつもそうだったしな。こうして俺の特訓もどきは始まった。
ーー数十分後ーー
「全敗した……」
「冬夜くん弱くなった?」
「いや綾香が強すぎる」
最初から全勝できるとは思っていなかったがまさか一度も勝てないとは。さすがに弱くなりすぎだろう。それもあるが綾香が強いのも確かだ。こいつ才能に溢れすぎではないだろうか。
「それじゃあ今日寝るときは私が好きにしていいんだよね?」
「……それが全勝した時の条件だからな」
この勝負をする前に綾香が提案したことで私が全勝したら夜は好きにさせてね、と言われたのだ。その時まさか全敗するとは思っていなかったし仕方ないだろう。
「それはいいけどまだまだ付き合ってくれよ?」
「えー……どうしようかなー?」
「おい」
「だって冬夜くん弱いからなー?なにか条件が欲しいなー」
「一晩好きできるしいいんじゃないか?」
「私は満足しないよ?」
「どんだけ強欲なんだよ」
「冬夜くんに関しては妥協しないので」
「はぁ……綾香が好きな条件つけていいから頼む」
「えっ……?」
「なに?不満?」
「いやほんとに好きな条件でいいの?」
「綾香ならわきまえてるだろうしいいよ」
「ふーん……じゃあ……私が全勝したら―――」
そう言って綾香が提示した条件は考えうる限り最悪のものだった。
そして俺は……
「負けた……」
「やったー!」
「なんでさっきより強くなってるんだよ」
「報酬があるからね、本気出すに決まってるじゃん」
というわけで一週間綾香のいいなりになることが決まりました。その分条件はかなり難しかったのだ。あれから時間の許す限り俺と勝負してそれを全勝したらお願いと言われたから許したのだが……まさか本当に全部負けるとは。
葉山さんに勝負する前に自信が全部なくなりそう。
「さ、今日はもう寝るよ?とりあえず私を冬夜くんの部屋までお姫様抱っこで連れていってね?」
「綾香の部屋じゃなくていいの?」
「ぬいぐるみがあって狭いじゃん」
「それ部屋の主が言う?」
「主だから言うんだよー」
綾香の言う通りに俺はお姫様抱っこで部屋まで連れていく。そのままベットに転がして俺もいつでも寝れる態勢になる。
「今日は抵抗しちゃだめだよ?」
「今日だけだぞ」
「うん、明日からはちゃんと加減をするからね」
そういって部屋の電気を消す。部屋が薄暗くなり目の前にいる綾香も見えずらくなる。すぐに衣擦れの音が聞こえて俺は綾香がなにをしだしたか察する。
「おい、まさか」
「しー……とうくんは動くのも喋るのもダメだよ」
まるであやすように言われて俺は何もできなくなる。衣擦れの音がやみ床に何かが落ちる音がする。なんとなくわかるがなにも言えない俺はただ綾香の方を見ていることしかできない。
「口あけて」
そう言われて軽く口をあける。そうするとすぐに綾香の口を塞がれて息ができなくなる。それと同時に綾香の舌が俺の咥内の入ってきて蹂躙していく。
「んっ……ちゅっ……」
部屋に生々しいキスの音が響く。少し苦しくなってきたところで綾香が離れてくれて俺は呼吸を整える。
「ただ攻められるのも悪くないよね?」
「俺はどちらかというと攻めたいんだけどな」
「今日はだーめ」
今度はめっというように諭すような軽い口付けをされる。徐々にに薄暗さに目が慣れていき見えずらかった綾香の姿がはっきりと見えてくる。
「やっぱり……」
「喋るのはだめだよ?」
そうして朝してきたようにに綾香の体が俺を包み込む。よりはっきりと感じる心地よい暖かさと柔らかさが俺の理性をどろどろに溶かしていく。
「まだまだ夜はこれからだよ?」
まるで小悪魔のように耳元でそう囁く。それから俺は綾香にすべてを委ね、理性を手放した。
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