キスの痕
ーー綾香ーー
途中まで冬夜くんと一緒に歩いてその後別れて登校する。手も繋げないしあんまり近い距離にいられないけど会話できるだけで楽しいから今はこれでいいと思う。
卒業して結婚してしまえばそんな制約もなくなるので後2年の我慢だろう。
けど今日の暑さだけは我慢出来ないかもしれない。未だ6月だと言うのに今日の最高気温は30度になるとかならないとか。ある事情で首元とか見せるわけにいかない私にとってだいぶ地獄かもしれない。
でも私立校でだいぶ緩いからエアコンをつけてくれるかもしれないだけましかな?冬夜くんとかクールビズって言ってエアコンがつかなさそうだからマシかも。
「おっはよー」
「おはよー、桜」
「……なんでそんな暑そうな格好を」
「なんとなくしっかり閉めたかったの」
「ふーん……ちょっとお姉さんに見せてみ?」
「な、なにをかな?」
「首元、あと鎖骨らへん」
「路上でとか絶対嫌だけど」
「なら校内ならいいよね?」
「桜の目が怖いのでダメです」
「つまり見せれないと」
「そういうこと」
「見せれない理由があると」
「そうだよ」
桜がものすごく疑ってくる。これお昼とか白ちゃん達にも言われるんじゃないだろうか。
「絶対キスしたでしょ」
「してないよ?」
「じゃあなんで隠してるの」
「……ちょっと蚊に刺されちゃって」
「綾香がそれで隠したことないよね?」
「今日は特別なの」
「絶対キスの痕があるでしょ」
やばい、友人がするどい。それをどう切り抜けようかと思った時に目の前にちょうど助けれくれそうな子を見つける。
私はその子に駆け寄って肩を掴みグルっと回転させて桜の方に向かせる。
「おわっ!?」
「弟くん!ちょっと私を助けて!」
なるべく小声で、でも急いでる雰囲気は出して救援を求める。
「えっ、なにが…………あぁ」
「納得してくれた?」
「はい、てか兄さんから聞かされてたので」
「冬夜くんはなにを言ってるのかな!?」
「綾香、その子は?」
「冬夜くんの弟くんだよ、昨日お家に来てたの」
「ほう、それで?」
「私の首元について証明をしてくれます」
「ほほう、ならなんて答えるのかな」
「……昨日割と大きめの蚊に刺されて、でちょっと大きめの痕が出来たんですよ。それでそれが我慢できなくてかいちゃって酷くなっててそれが見せたくないんじゃないかなと」
心の中で弟くんナイス!と叫ぶ。実際は後ろで首をカクカクしてただけだど。
「そこまで言うならそういうことにしとくよ。絆創膏とかはつけてるんでしょ?」
「うん、けどなんとなく見られたくないし」
「そりゃそうだよね。疑ってごめんね?」
「いいよ、別に」
綾香と和解してそのまま一緒に学校に歩く。と、そこでこちらににものすごい視線が向けられていることに気づく。
視線の主を覗き見ると我が校の生徒会長様がいた。
「ねぇ、綾香。めっちゃこっち見られてない?」
「見られてるね」
「私たちなんかしたっけ?」
「いやー……それとは違うと思うなぁ……」
「はぁ……俺は向こう行ってきますね」
「なんかごめんね……」
一応手を合わせて謝っておく。弟くんが生徒会長のとこに駆け寄って行くのを見て私は桜の方に向き直る。
「あれなんだったの」
「噂のやつじゃない?」
「あー、生徒会長さんが1年にお熱だって言う?」
「そうそう、知らない子と話してて嫉妬したとか」
「そっか、綾香はともかく私は知られてないもんね」
「嫉妬かどうかはわからないけどそんな感じでしょ」
「私たちより青春してそうだね。会長様は」
「卒業した後とか大変そうだけどね」
「歳が違うってほんと不便だね」
「……私が1番危ないじゃん……」
「下手したらおにーさん捕まっちゃうもんね〜」
「法律めぇ……」
結構本気で法律を恨みながら学校に入っていく。教室に入ると流石にこの時期に首元を全部閉めているのは気になるようにで、主に女子からの視線がすごい。それでも聞いてこない分ある程度気を使ってくれているのだろう。
もしくはなんとなく理由を察せられてる。流石にそこまでみんな勘が良くないと信じたいよ、私。
「私たちの周りってよく考えたら普通の恋愛じゃない人多いね」
「多いって言っても私とさっきの弟くんぐらいでしょ」
「白ちゃんも割と普通じゃないと思うよ。今はいないけどさ」
「あー……なぜか年上のお金持ちがたくさん来るもんね。しかも全部めっちゃいい人達ばかり」
「ね、いい人達すぎて逆に困るよね」
「断るのも申し訳ないもんね」
「黒ちゃんは……あの子まだ彼氏いた事ないよね」
「だね、ただ距離感は異常に近いけどね」
「確かに、勘違いして撃沈した男子が何人いることか」
「黒ちゃん天然だからなぁ……」
男子が付き合って下さいって言っても、へ?なんで?みたいな返し方を平然と黒ちゃんはする。しかも悪気なんて全くないし。絶対情操教育したほうがいいよね。あの子。
「まぁみんな幸せならなんでもいいよね」
「そのまとめ方は桜には出来ないと思うよ」
「私が1番付き合って別れて繰り返してるからね」
「まだ大丈夫なんでしょ?」
「それはもう。なんというか普通すぎて逆に不安になるぐらい」
「それでいいんだよ?普通は」
「まぁゆっくりやっていこうと思うよ」
「そうしなさい」
「だから綾香も頑張るんだよ?」
「わかってるわよ」
桜に諭されるように言われて若干頬を染め、目を背ける。それをからかわれるように笑われて朝の時間は過ぎていった。
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