幼なじみで婚約者の美少女JKと同棲することになりました
水姫 唯
始まりは突然に
社会人、そんな響きがよかったと思っていたのはいつまでだろうか?高校生まで?それとも大学生?ふとそんなことを考えるほどに自分は疲れているのだろう。
疲れといっても仕事による肉体や精神の疲れではない。なんとなくの疲れだ。おそらく気分の問題、雨もあってナイーブになっているのかもしれない。
そんなことを考えながらいつものように定時に仕事を終わらせ会社を出る。
「あっ、冬夜先輩!」
「ん?なんだ和泉か」
「はい!貴方の後輩、和泉です!」
いかにも元気です!って感じで近寄ってきたのは後輩の
「今日も定時で帰ってるんですね」
「そりゃそういう風に働いてるんだし」
「普通はちょっとぐらい残業があるもんですよ」
「そういうもんか?」
「そういうものです。後輩の身にもなってください」
「お前が頑張ればいい話だろう?」
「先輩みたいには無理っす」
「はは」
和泉と少し話ながら駅までいく。別に電車に乗るわけではないが買い物をして帰りたいからだ。
電車に乗る和泉とは駅前で別れ俺は買い物ができるスーパーに向かう。お酒を少しと食材を買い入れ帰路につく。
今の俺の家はちょっと高めのマンションで会社や駅に近く最初は親の協力もあってここに住んでいる。今は定期的に送られてくる仕送り以外の援助は貰っていないが。
自宅のドアの鍵を開けようとして気づく。鍵が掛かっていないのだ。朝閉め忘れたのか誰かに侵入されたのか。マンションのオートロックがあるし入られることはないと思うが緊張する手でドアを開ける。
その先に立っていたのは、美少女だった。
正確には幼なじみの。
「……なんで綾香が?」
「おかえり冬夜くん、お風呂にする?それともご飯?それとも……膝枕?」
「……色々言いたいけど最後膝枕でいいのか?」
「冬夜くんは私が食べたかった?」
きょとんとした顔で俺を見てくる綾香。確かにいまの言い方だと俺が綾香を欲しがっている風に聞こえなくもないが……。
「お前を食べたいわけじゃないがなんとなくツッコんだだけだ」
「それで膝枕と抱き枕どっちがいいの?」
「選択肢変わってね!しかも結構絞られてる!?」
「私が欲しいのかな?って思って」
「ほんと油断ならんな……お前は」
おっとりしているように見えるが綾香はこういうところがあるから油断ならない。それでも疲れないし楽しいのはこいつだからだろう。
「ちなみにお風呂は沸いてるよ、ご飯はまだ」
「なら風呂入ってくる。ご飯食べた後に全部聞くからな」
「ん、ご飯楽しみにしてて」
あまり休めないだろうが身体だけでも疲れは取るべきだろうと判断してお風呂にはいる。……そう言えば綾香のご飯食べたことないけどあいつ料理できるのだろうか……
いかん、また不安要素が増えた
「おぉ、ちゃんと出来てる」
「うん、料理は勉強してるから」
「シェフ、今日のメニューは?」
「煮込みハンバーグとポテトサラダ。コンソメスープだよ。味は冬夜くん好みになってる」
ちょっと悪ノリしてシェフなんて呼んでみたけど綾香はドヤ顔しながら返してくれた。あいつなりにノってくれたのだろう。
「冷めたら悪いし……いただきます」
「いただきます」
2人で手を合わせで食べ始める。俺はハンバーグから。箸で割ると肉汁が溢れてきて期待が高まる。口に運ぶと肉の旨みとデミグラスソースがものすごくマッチしていてこれが完璧なものだと伝わってくる。
結論を言おう。
「……美味い」
「美味しいならよかった」
綾香がほっとしたような笑みを浮かべる。その顔が可愛くて一瞬目をそらしてしまうがすぐに目を合わせ会話を続ける。
「ずっと練習してたんだな」
「いっても高校生になってからだよ」
「じゃあ1年でこんなに上手くなったのか」
「そういうことだね」
「相変わらずすごいな」
「冬夜くんに比べたらまだまだだよ」
「俺より上手だろ」
「そんなことないよ、まだ1年前に食べた冬夜くんのハンバーグを越せた気がしてないもん」
「あれを目指してるのか……」
「というより冬夜くんが凄すぎるんだよ?学校でも冬夜くんを超えれてないし」
「どういうことだ?」
さっぱりわからんと言う感じを首を傾げながら綾香に聞く。
「成績とか賞とか学校に残るタイプのもの」
「別に越すものじゃないだろ」
「私の目標なんてそれぐらいだよ?」
「ほかを探す気は?」
「ない」
さっきまでのおっとりした雰囲気とは違い確固たる意思をそうもって答える。
「なら止めはしないけど……ほどほどにな」
「うん」
そうして俺はご飯の後と決めていた話を今持ち出す。
「それで綾香はなんで家にいるんだ?」
それを聞いた綾香はまたさっきと変わった雰囲気になる。今度は幸せいっぱいみたいな感じの笑顔で俺にこう言った。
「私今日からここに住むの」
「は?」
俺は持っていた箸を落とした。
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