タイ航空と亀田製菓
※写真は近況報告ページに掲載しています。
タイ航空は、搭乗すると生花を貰えるんです。無機質な機内での生花は心落ち着きます。心遣いに感謝です。
あれは、酒の味を覚え始めた22歳の冬。タイ航空を利用し、母を連れてタイへ貧乏格安旅行に行く時の事。
夕食を食べ終え消灯された機内。周りは寝ているが、私は映画を見ていた。国際線では日本で現在上映中の映画が見られる。見ない理由は無い。
ドリンクメニューからラムとコカコーラを頼んでチェイサーしながら、おつまみの亀田製菓のおかきをボリボリと一人で満喫していた時だった。
「お客様、ドリンクのおかわりいかがですか?」
暗い通路を歩いてきた乗務員さんに声をかけられる。カップは空だったので、丁度良かった。ラムとコーラのおかわりをお願いした。高度で飲むラムコークが余りにスッキリキリッと甘くて美味しくて、声をかけられる度に同じものをお願いしていると
「タイは初めてですか?」
3回目のおかわりを聞きに来てくれた乗務員さんから声を掛けられる。
「いいえ。いつも格安で行くんです。長期で行く時は、アパート借りればゲストハウスより安いですし」
「そうなんですね。旅慣れた感じがしていたんですよ」
私は幼少期から見た目が年配に見えるので、そう感じたのだろう。優しく笑う乗務員さんが少しお話しをしてくれて、会釈をして去って行った。楽しかった。
さて、映画の続きを見よう。すると、他の乗務員さんがやってきた。
「おつまみのおかわりはいかがですか?」
酒ばかり飲んでいては胃に悪い。有り難くお願いすると、2袋も貰えた。そしてタイではいつもどの辺りに行くのか聞かれたので、少しお話しをする。私は物価の低いチェンライに長期滞在している。バンコクやプーケットは金持ちがバカンスする所だ。
「お酒足りてますか?よければ、ラムコーク作ってきますよ」
お酒が進み空になると、優しい気遣いをしてくれる。他に起きている人はいないからと、特別にカクテルを作ってくれるそうだ。
お願いすると乗務員さんは会釈をして去って行った。楽しかった。
「お待たせしました。お客様、タイはお好きなんですか?」
また別の乗務員さんがラムコークを持って来てくれた。タイで食べ歩くのが好きなのだと言うと、今回は何を食べる予定なのか色々と聞かれる。その乗務員さんも食べ歩きが好きだそうで、話が弾む。楽しい。
「お飲み物のおかわりはどうですか?」
つい酒が進んでしまい、コップが空になると直ぐに言われる。何て優しい気遣い。嬉しい。
またラムコークをお願いする。他に飲む人がいないのに何でも頼むのは申し訳なかったから。
乗務員さんが笑顔で会釈をして去って行く。そして暫く待つと、またまた別の乗務員さんがラムコークと共におつまみを持って来てくれた。
「お客様。映画好きなんですか?」
毎月一本は映画館に見に行くと言うと、最近のお勧めを聞かれた。乗務員さんの好きなジャンルを聞いて、洋画と邦画でこういうのはどうですかと勧めると、メモをして、今度見てみると笑って下さった。嬉しい。
次々に交代して来てくれる乗務員さん達。笑顔が綺麗で優しく、酒は強くないのについ酒が進み、2時間で8杯も飲んでしまった。入れ替わりで来てくれる4人の乗務員さんとの会話は、対話の勉強になりました。
そろそろ朝食の準備だからと乗務員さんが去っていき、暫くして機内が点灯されアナウンスが流れる。
隣で寝ていた母が起きて、私を見て驚いた。
「あんた。何でそんなにおつまみ持ってんのよ」
次々と乗務員さんがくれたので、机の上に8袋のおかきが積まれた状況を見ればそう言うのは当然。
「母さん、良い旅行だったわ」
「それは良かった。まだ行きの便だけどね」
変なテンションの私に、起きたばかりの母は冷静に対応してくれた。
こうして私にとって価値ある時間を過せ、亀田製菓のおかきは良い思い出と共に私の好物となりました。
見そこねた映画は後ほど、映画館に行きました。
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