あの世はどんな所?

長瀬は人に見えないものが見える。


いわゆる幽霊のようなものだ。幽霊はあらゆる場所にいる。場所によっては、人間より多いくらいだ、年格好などは様々で、ほとんどの場合、特に悪さもせず、ぼーっとその場所に佇んでいるだけだ。


自分が誰か、なぜここに居るか、忘れているようだ。


しかし、死んだ直後の幽霊は少し様子が違う。彼らは、死んでも、まだ意識がある事と、人に話しかけても反応がない事に惑っている、そういう幽霊に、私が見えている事に気付かれると厄介な頼み事をされたりするので、気付かないふりをしている。


死んで暫くして、誰も反応が無いのが分かると、ほとんどの霊は諦めて違う世界へ行く。この世にいつまでも居座っているのが、幽霊という訳だ。幽霊は話しかけても反応はほとんどなく、夢うつつのような状態だ。彼らのパーソナリティーは風前の灯火だ。


幽霊が見えたからと言って、得をしたことも、損をしたこともない。一つ言えるのは、世の中は、目に見える物が全てではない事と、自分が死んでも終わりではないという事だ。





ある日、長瀬が出張先の旅館で、地元の郷土料理に舌鼓を打っていた時、突然、見知らぬ女性二人が目の前に現れた。また、死んでいるのに気づかない幽霊かと無視していると、その女性の幽霊が悲鳴を上げた。





女将が申し訳なさそうに言った。

「すみません。このところ滅多に苦情がなかったので問題ないかと思っていたのですが。。。」





と、女性に向かって謝っている。







「そうだ。私は、仕事のストレスで自殺をしたのだった。」

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