日本の底ヂカラ

どこのオフィスにも役立たずの嫌なヤツはいるものだ。



河田もそんな嫌なヤツの一人だった。



仕事は遅いが、人のミスを見抜く事が得意だった。人を落として自分の価値を上げるタイプだ。人の間違いを見聞きすると、一日中その話題を周りの社員に説明する。当然、その間は仕事をしていない。



日本の会社には、このような人物の割合が世界トップクラスと言われている。窓際「madogiwa」という日本発祥の言葉で語られ、日本特有の文化だという学者もいるくらいだ。



その学者の著書「Strange Things Of Japan」の中で語られているのは日本人を「Japanese」と呼び複数形が無いのは、魚と同じ理由で個々を識別できないからだという。いわば虫「bugs」以下ということだ。



話がそれたが、河田のような社員の割合の多さの理由だが、日本人は彼のような嫌われている社員に、陰口「kageguchi」を言う事で、円満な人間関係を保つというのだ。



会社に直接利益は産まないが、こんなクズでも生きていると、周りから蔑みの目で見られる事で人に安心感を抱かせるメリットもあるという。



ここで、視点を変えて見てみよう。河田は、いちばん大切な自分の人間性までをも犠牲にして会社に貢献しているのだ。普通の人間に出来る事ではない。究極の自己犠牲だ。



日本の会社は国際競争力を失っていると聞く。その原因は、馬鹿な役員連中であって、決して労働者ではない。



日本が誇る窓際パワーで、再び日本の企業が世界で存在感を示していくことを信じてやまない。

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