私を認めて!

田代鏡子は、なぜ結婚できたのか不思議に思われるほど、地味な顔や身なりだ。


このような結婚の場合、ほぼ間違いなく夫は亭主関白である。鏡子はいつも忙しく家族の為に働いているが、感謝されたことがない。まるで人格のない家事ロボットのようだ。


「今日も頑張ってね。お疲れ様。」


ある日、どこからか鏡子の耳に優しい声が聴こえるようになった。普段、誰からも認めて貰えない鏡子には、貴重な体験である。


最初は、励ましの言葉ばかりだったが、徐々に鏡子への指示に変わっていった。

「家事などするな。」とか「旦那の言う事など無視をしろ。」など、過激な内容が多くなった。鏡子はこれを神のお告げだと思い忠実に実行するようになった。


家の中は荒れ果ててしまった。

元々、殺伐とした愛情のない家庭だったので田代家はとても居心地の悪い家庭になった。


鏡子が聞いていた言葉は、彼女の心が暗く沈んでいた為、その波長に同調した悪霊の戯言であって、神のお告げなどではなかった。しかし、鏡子は指示に従い行動し、振り回され、次第に人間らしさを失っていった。


「ママ!最近言っている事が無茶苦茶だよ。前の優しいママに戻ってよ!」

泣きながら一人息子の聡太が言った。


鏡子は我に帰って思った。

「私を頼りにする息子がいたんだ。これからは、また家族の為にがんばろう!」


しかし、一度、この世との接点を持った悪霊は、簡単に鏡子を自由にはさせない。

やがて、鏡子の体は悪霊の巣窟と化し、鏡子の人格は消えてしまった。


このように、悪霊は人の心の弱みに付け入って乗っ取ろうとする。最近多いメンヘラの方は特に気をつけた方が良い。まずは自分で自分を認めてあげることが大切だ。


あなたは、自分は大丈夫だと思っていないだろうか?


星占いなどの、あやふやな人のアドバイスに振り回されるのは、危険な予兆なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る