出世のコツ

大企業の部長、山本は仕事のことをまるで知らない。


なぜ部長という役職でいられるのか?


それは彼が特殊能力者だからだ。

彼には自分が偉いと人に思わせようとしていると、あからさまに相手に解らせる能力に長けている。

彼に関わった人は、できるだけ彼には関わりたくないと、彼のことを思い描くことさえもやめてしまうのだ。

結果、かれは透明人間のような存在になる。彼の無能ぶりも透明で見えない。


当然、彼のようなタイプは出世欲が強い。

彼の上司もまた関わりたくない一心で、彼の出世を上司に勧め、その上司も関わりたくないので認める。


世の中の地位の高い人物の殆どが、能無しである理由がここにある。

その証拠に某大手銀行では、コリもせずシステム障害を繰り返している。


ウイルスが世の中を襲い、彼の会社でも例に漏れず在宅勤務となった。

ただでさえ透明人間の山本は、会社から忘れ去られる事となった。

すでに、家族からは10年ほど前から忘れられている。


彼は晴れて物理的にも、世界初の透明人間になったのであった。


調子に乗って女風呂を覗いていた時、たまたま湯気で姿が見えた為、警察へ通報され監獄に入り、監獄の中で再び透明人間になった。


その後、彼自身をを含め、彼を見たものはいない。

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