シニカル ショート ストーリーズ

@uecyan

私の妻は宇宙人[エイリアン]

妻との結婚から25年目になるが、どうして出会って結婚に至ったのか記憶にない。


本人に聞けば早いのだが、怖くて聞けないのだ。恐妻家という訳だけでもない。妻との会話は一般的な夫婦より多いほうだ。毎日、夕食時にはお互いの面白い出来事を話し合い笑っている。ただ、出会った頃の話になると妻の機嫌が途端に悪くなり話題を変えられてしまう。


第三者にも確認はできない。妻も私も交友関係は限定されている上、お互いの親とも折り合いが合わず関係を絶っている。そう考えると、私達夫婦はポツンと宇宙に存在する孤独な存在に思えてくる。私達が突然この世から存在しなくなっても、誰も気に留めないだろう。


ある土曜日の朝、目を覚ますと妻がいなかった。


散歩にでも行ったのかと思ったが、何かあきらかな違和感がある。妻の存在を示すものが何もないのだ。服、歯ブラシ、靴、妻の持ち物がどこにもない。まるで、一度もこの家に存在したことがないように。妻の行き先を探ろうと、連絡先をさがしたが、友人から親戚関係に至るまで何も知らないことに愕然とした。


何もできないまま日が暮れてきた。

思い切って警察に行こうとしたが、未だに結婚届を出していないことを思い出した。お互い形式に囚われないでおこうと話し合ったのだった。もう考えるのが辛くなってきた。少し早いが寝ることにした。昔から私はストレスが溜まると眠くなるのだ。



次の朝、起きると妻が光っていた。



人間って光るんだと呆然として暫く眺めていた。しびれを切らした妻が私を見て言った。



「何かしら言うことはないの?」


「すごく光ってるね。」


「・・・」


(間違えた…?)

「き。き、きれいだね…。」



あきれたように妻はため息を付いて語り始めた。


あなたは、よく私達が出会った頃のことを聞いていたよね。

実はあなたは人間じゃないの。あなたはゲームのキャラクターで、私が毎日会話して育てていたの。でも私が結婚することになってゲームを終了しなければならなくなったの。25年も私の話し相手になってくれてありがとう。

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