第27競争 文化祭②
凄い……これをたったの2日で作ったの?
一ノ
今日は目の下におっきいクマを作ってたから
きっと寝ずに編集してたんだよね
この動画に合わせたシナオリを作らないと……
自分の部屋でパソコン画面とにらめっこするも
アイデアも言葉も全く出て来ない
一度ノートパソコンを閉じて
ふぅ~っとため息を吐いた
文才ないのかもわたし!
「スイ姉、入るよ」
「もう入ってるじゃない」
いつものようにノックと同時に入ってくる
「今度の土日って、スイ姉の学校文化祭だよね? 」
「そうだけど、もしかして来る? 」
「友だちと行くんだけど、
「日曜の午前はテレビの仕事でいないだろうから、それ以外なら大丈夫だと思うけど」
「良かった。部活あるから、行くのは日曜の昼過ぎだし、別にスイ姉はいなくても良いからね」
舞は競馬愛好会の存在を知ってるから良いけど
その友だちとかびっくりしないかな
空に会いに来たかと思えば競馬見る事になるけど
言うだけ言って部屋を出て行こうとする舞に声を掛ける
「舞、全く知らないものに興味持ったり好きになったりする時ってある? 」
振り返ると不思議そうな顔で見てくる舞
「ものによるだろうけど親近感湧いたり、友だちとか好きな人がそれに興味持ってたら、自分も。ってのはあるんじゃない」
競馬に興味持った最初の頃を思い浮かべると
舞の言葉に妙に納得してしまった
「アンタにしては良いこと言うじゃない。ありがと、早く出てって」
「そりゃ。舞ちゃんは」
何か言おうとして舞の背中を強く押してドア を閉めた
わたしが競馬に興味持つきっかきになったのは、空やエイルちゃん、
きっかけなんか何でも良くて
その後に繋がるかどうかなんだよね
パソコンの隣に置いたスマホが点滅してたので見ると
一ノ瀬さんからメッセが届いていた
『
それだけだった
わたしらしさ……素のわたしらしさって言ったら、これしかないよね
パソコン画面に打ち込んでは消し打ち込んでは消し
翌日に学校から帰ってきても
自分が納得するまで何回も何回もシナオリを書き換えた
一ノ瀬さんの動画は1時間程だったけど、ようやく納得したものが出来たのは金曜日の22時過ぎだった
ヤバイ!
本当なら20時までに一ノ瀬さんにデータ送って、空が声を入れる事になっていたけど
なんやかんや自分でも盛り上がっちゃった
すぐに一ノ瀬さんのパソコンに書いたシナオリを転送する
ちょっとした誤字脱字はあるかも知れないけど
わたしらしさ。が出てるだろうし、少しでも興味を持ってくれる人がいたら嬉しい
自分の恥を捨てでも書いたシナオリだから
『確認した。
そうよね
受けるウケる……まぁ、少し冷静になってくると
凄い恥ずかしい事をわたしは書いたのでは??
でも、だいぶ前だけど空もやりたい。みたいな事を言ってたし
書いてくうちにどんどん、ランナーズ・ハイみたいなライターズ・ハイになってたもん
時間にも追われてたから もう行ってしまえー
みたいな感じだったし
真剣に本気で書いたけど
あぁ もう、顔が熱い……でも、空のナレーション楽しみだなぁ
文化祭当日の学校は華やかな飾り付けもしてあり
校門から校舎に続く道には模擬店がズラリと並んでいた
まだ11時前なのに多くの人で賑わってるじゃない
見た感じでは去年よりも模擬店多い気がするし、校門で貰ったプログラム表をパッと見ると教室ごとでやってるイベントも多そうだし
上村先生は今年は参加する部活等や有志メンバー少ない言ってなかったっけ?
「おはよ。って、一ノ瀬さんと空は? 」
「おはよ。まだ、来てないよ」
競馬愛好会の部屋に入ると
火山さんとエイルちゃんはテレビをセッティングしたり席を作ったり、役割をちゃんとやって忙しそうにしてるけど
「少し前にミズキから連絡あって、13時までには間に合わせる。ってさ」
1時間ある動画を上映タイムを決めて、土曜日は3回
日曜日は9時から菊花賞の始まる15時までに5回流す予定になっていた
今日は1回目が13時30からだったはず
本当にギリギリじゃない
「ボクとエイルっちで準備しとくから、ひらっちも文化祭まわってきたら」
「良いよ。わたしも手伝う」
空と回りたかったけど
皆でこうやって何かをしてるのも悪くない
昔のわたしには持ち合わせてなかった感情だ
その後も せっせと準備をし
お昼もを過ぎても2人はまだ来ない
「火山さん! もう13時だよ。このまま来なかったらどうしよう」
「あと10分あるし、来るよ」
「ん、来なかったら模擬裁判」
やだよぉ 模擬裁判なんてしたくないよ
なんでエイルちゃんも落ち着いていられるの?
13時を少し周り
ジッとしてられず部屋の中をウロウロとしていると
「ごめん、少し遅れた」
「良かったぁ。やっと来たよぉ」
「彗が悪いんだよ。あんなシナオリ書いてくるから」
アハハ、何も言えません
「星宮もスイッチ入ったのか納得するまで何回も録り直すから」
「みんなが本気でやってるのに、アタシも妥協したくなかった」
「ボクたちでセッティングの席準備は終わってるから、後はお客様を迎え入れよう」
上映開始15分前
部屋のドアを開けるも人は全く集まってなかった
「あれ? ミズちゃん。ここだけ
台風の目になってるけど、無風だよ無風」
プログラム表を手に取り穴が空くほど見つめる一ノ瀬さん
「実行委員の奴らプログラム表から『イマドキ同好会』の名前以外を全部消したな」
「ミズキ。何でそんな事になるのさ? 」
「恐らくだが、名門でもあるこの女子校に『競馬』って文字は入れたくなかったんだろ」
なにそれ? 別に賭け事をする訳じゃないから違法でもないのに
『競馬』って良く知りもしない癖にイメージだけで消されたのが凄い腹立つ
何でわたしもプログラム表貰ったときに確認しなかったんだろ?
普段ならしてるのに……自分自身にも腹が立つ
「酷い。アタシたち上村先生に事前に参加証明書出して言ってたんだから、ダメならダメって言ってくれれば良いのに」
「星宮。上村先生は参加証明書を実行委員に出したんだよな? 」
「前に聞いたら『ちゃんと出したわよ』言ってた」
「ん、闇に葬った実行委員は有罪」
「……今更、何を言っても遅いだろ」
悔しそうに唇を強く噛む一ノ瀬さん
「まだだよ、ミズキ。呼び込みでも良いし、ビラ作ってビラ配りもする。まだ出来る事は沢山ある」
「そんなのやっても焼け石に水だ。ここのメンバー目当てに来る奴しかいない」
ごめんなさい。それはウチの
火山さんの呼び込みのおかげでチラホラと人は来てくれたし、その人たちには好評だったけど
土曜日は完全に失敗に終わった
「明日もボク朝から呼び込みするし、ビラ作って配るよ」
「ん、やっても良い」
「エイルっちも手伝ってくれるの」
「ん、暇なのは飽きた」
コクンと頷くエイルちゃん
火山さんとエイルちゃんの2人なら期待出来そう
「もう。アタシ秘密兵器使っちゃうよ! 実行委員には頭きた」
「空の秘密兵器ってなに? 」
「秘密兵器だから秘密だよ」
「えぇ。わたしにも? 」
「彗にも。ミズちゃん、明日はキャパオーバーになるから、入れなかったお客様には丁重に断ってよ」
一ノ瀬さんの様子が何かおかしい
「ミズちゃん? 」
「ミズキ? 大丈夫?? 」
「ごめん……私のせいだ、私が事前にプログラム表を確認しなかったから」
「でも、一ノ瀬さんは寝ずに動画編集してたし」
「そうだよ。ミズちゃんのせいじゃないよ」
責任を感じてる一ノ瀬さんは俯き黙ってしまうと
火山さんが立ち上がり一ノ瀬さんを後ろから抱き締めた
「大丈夫だよミズキ。ボクが何とかするし心強い仲間もいる。まだ失敗した訳じゃない」
「でも、私がちゃんとしてれば」
「ミズキはちゃんとしてるよ」
全員が頷いた。
わたしたちも一ノ瀬さんに頼ってばかりだったのが悪いんだ
一ノ瀬さんなら何とかしてくれる
一ノ瀬さんに任せとけば良いや。って思いもあったし
変にプレッシャーを一ノ瀬さんに与えていたのかもしれない
「そらっちの秘密兵器に、ボクとエイルっちの呼び込みだよ。ひらっちもいるし」
いるだけでごめんなさい!
何でもします‼
何をしてでもせっかく作った動画なんだ!
恥ずかしいけど少しでも多くの人に見てもらいたい
「だな。それは心強い」
フッと笑い少しだけ元気を取り戻した一ノ瀬さん
「見せて上げるわ。ローカルタレントの意地! 」
空の気合の入った一言が凄い気になったけど
何をしてくれるのか楽しんでるわたしもいる
明日こそ競馬の魅力を伝えるぞ!
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