マルちゃん神話の一部になる

他山小石

第1話

 昔々神話の時代。

 太陽の神である天照大神 (あまてらすおおみのかみ)は天の岩戸に引きこもってしまいました。

 太陽は引きこもり真っ暗になってしまいました。

 神様たちが集まって会議をしましたなかなかいい案は出ませんでした。

「日頃からのアテンドが」

「ドラスティックな改革が必要なのだよ」

「意味わかってて言ってんスか?」


 そこで思金神(おもいかねのかみ)がこう言いました。

「マルちゃんに相談しよう」


 再び岩戸の前に集まった神々。一人だけスーツのお兄さんがいた。

「初めましてマルちゃん営業部の田中と申します。この度はご挨拶と共に弊社の商品サンプルを是非お試し頂きたく参上いたしました」

 返事はありません。

「天照大神様にご試食いただきたく思いますが、いかがでしょう」

 思金神が一言。

「少々体調がすぐれぬようで、どれワシがいただこうではないか」


 湯を持ち、砂時計をひっくり返して3分、ついに時はきた。

「緑のたぬきでございます」

「ではいただきます。ほぅ、これはうまい」

 あたりには香りが漂います。周囲の神々は「おいおいうまいことやりやがったぜ」「実は自分が食べたかっただけじゃないの?」と失礼な言葉も聞こえます。

「いやぁ、うまい。ひゃあ、うまい!」

 夢中で食べる思金神。

「……それ、わらわの分はないのですか?」

 思金神は眉毛をピクリと動かします。

「では扉を開けてもらえますかな?」

 しかし閉じこもった太陽神はなかなかでてきません。

「ここの隙間から、ほれ、渡してくれてもよいのだぞ?」

 隙間が空いても鶏ぐらいしか通れそうにない。

「いやぁ、うまい。しかし食べかけのものをお渡しするわけにはいきませんのぉ」

「ぬし、……わらわを怒らせるつもりか」

 太陽から悲し気な響き。そこに救いの声が「いえこちらの商品もあります」実は既に湯を入れている。

「赤いきつね、あと少しでできあがります。次は女性の方で」

「あ! はいはーい!」

 天宇受売命(あめのうずめのみこと)は元気よく手を挙げる。

「できあがりですね、ではこちらを」

「まてーーーい」

 天岩戸をふさぐ大岩は木っ端みじん。

 神々の歓声、湧き上がるマルちゃんコール。空を駆け、今太陽の神が現世に戻った。

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マルちゃん神話の一部になる 他山小石 @tayamasan-desu

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