129、氷漬け (お題:氷)
「天然の冷凍庫だな」
洞窟の高い天井に、私の声が反響した。
眼前には一面の氷壁。上方を透かし見ると人影がひとつ、両手を高く掲げた姿勢で固まっていた。
「事故で落ちて、何とか出ようとしたんだろうな」
その願いは叶わず、身体もろとも凍結されてしまったわけだ。
「いや、よく見ろ」
青ざめた顔で、彼が言った。
「あの死体、ゆらゆら揺れてるだろ?」
その言葉通りだった。
「つまり、氷の向こうは水なんだ。なのにあの位置から動かないのはおかしいだろ。多分……水の中に吊り下げられているんだ」
と、洞窟の奥から獣の唸り声が聞こえてきた。
「本当に、これは冷凍庫だったんだよ」
餌場を荒らされた怒りからだろう、獣の声が一際高く響き渡った。
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