116、指し示す (お題:道標)

 私は唾を呑み込んだ。

 目の前には、暗黒街の大物が座っている。いわゆるフィクサーという存在だ。

 彼には黒い噂が絶えない。インタビューも終盤。思い切ってそれについて尋ねてみると、彼は愉快そうに笑った。

「猿の手、だよ」

 意外に思った。願いを三つ、望まない形で叶えてくれるというオカルトアイテム――その名が彼の口から出るとは。

「この先の人生で成功し続けるように、と願ったんだ。さて、どうなったと思う?」

 彼は真顔になった。 

「自分の邪魔になりそうな人間はみんな死ぬようになったのさ。例えそれが大切な友人でも、愛している家族であっても」

 わずかの感情も見えない双眸が、じっと私を見つめる。

「さて、君はどっちなんだろうね?」

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