　手を伸ばしても、するりと逃げていく。

　いつもそうだ。チャンスは巡ってくる。が、私はそれをものにすることができない。

　失意の帰路。山道の少し開けたところで車を降りた。頭上には満天の星。

　ふいに子どもじみた思いが湧き、空へと手を伸ばす。星を掴もうとした手は、けれど虚しく宙を掻くばかりだった。

「取れますか？」

　振り返ると、男が一人立っていた。

　赤面して答えられずにいる私をよそに、彼が隣に並ぶ。その手がふわり宙へ伸びると、何かをすくい上げた。

「今日はよく取れますね」

　男が手の平を見せる。小さな星が二つ輝いてた。

　呆然と男を見送った後、もう一度手を伸ばした。祈るように開いた手にはけれど、やはり中空があるばかりだった。

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