99、三頭の牛 (お題:乳製品)

「見てー」

 娘が画用紙を差し出した。見ると、クレヨンで描かれた牛が三頭並んでいる。

「よく描けてるね」

 私が褒めると、彼女は嬉しそうに一頭を指差した。

「この牛さん、コーヒー牛乳出すの」

 白地に黒の斑。つまり、それらが混ざってコーヒー牛乳――直截すぎる発想に、私はくすりと笑った。

「こっちは?」

 隣の真っ白い牛を指す。

「牛乳」

「じゃあ、この牛さんは?」

 私はからかい気味に尋ねた。何しろ、その牛は全身を真っ赤に塗られていたのだから。トマトジュースだろうか、それともケチャップ? 

 けれど、娘は途端に無表情になり、何も言わず部屋を出て行った。

 画用紙をもう一度見る。真っ赤な牛と目が合った気がして、慌ててテーブルへ放った。

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