74、矢印 (5/4:みどりの日)
閑静な住宅街の一画。突き当たったT字路で、一方の道へと矢印が描かれているのが目に留まった。
形からして道路標示かと思ったが、それにしてはおかしい。白ではなく、それは緑色をしていたのだ。
誰かのいたずらか? 興味を引かれ、私は矢印へと折れた。
しばらく進むと、十字路にまた緑の矢印。そして、その先にもまた。
薄気味悪くなってきた私は、何度目かの矢印で足を止めた。これで最後にしよう――そう決めて、十字路を矢印の方向へと曲がった。
一面の緑が目に飛び込んできた。路面から塀、電柱、左右の民家に至るまで、すべてが緑色に染まっていた。もしかすると、空気さえも。
当然、一目散に逃げた。
以降、緑の矢印に出くわしたことはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます