68、ホマプレスケ (4/28:象の日)

「群盲象を撫でる」

 私は生徒たちに言った。

「この地に伝わる古いことわざです。自分の分かる範囲でしか物事を理解しない習性を指します」 

「僕たちと違って頭が悪いからじゃない?」

 くすくす笑い声が起こる。私は教師の威厳を持って答えた。

「ここの住民は決して頭が悪いわけではありません。にも関わらず視野が狭いから厄介なんです」

「つまり、ホマプレスケってことでしょ」

「そんな言葉を使ってはいけません」

 声に厳しさが増す。

「彼らが不完全なのは彼らの責任ではないのですから。いいですか?」

 はーい、と返事が部屋中からこだました。

「では、遠足を開始します」

 私は生徒たちとともに植民星であるA28849――この地の俗称で地球へと降りた。

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