34、出産 (2/4:妊娠の日)
妻の出産に、産婦人科医である私はもちろん主治医として臨んだ。
だが予想外のトラブルが重なり、母子とも仮死状態に。そこから持ち直し、産声が上がったのは丸一日後だった。
――よくがんばってくれた。
涙が頬を伝う。何があろうと妻と子を大切にしよう――そう決心した。
だが。
何かが奇妙だった。見ると、取り上げた赤ん坊は口を開いていなかった。
では、この産声は? 出所をたどった私は凍り付いた。
大口を開けた妻。産声はそこから間断なく響いていた。
慌てて赤ん坊を見返す。今度は小さな口は開いており、弱々しいうめき声が漏れていた。
「ふぁふぁふぁふぁふふぁふぁ……」
全身が粟立つ。その声は、私の耳にこう聞こえた。
――あなた助けて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます