34、出産 (2/4:妊娠の日)

 妻の出産に、産婦人科医である私はもちろん主治医として臨んだ。

 だが予想外のトラブルが重なり、母子とも仮死状態に。そこから持ち直し、産声が上がったのは丸一日後だった。

 ――よくがんばってくれた。

 涙が頬を伝う。何があろうと妻と子を大切にしよう――そう決心した。

 だが。

 何かが奇妙だった。見ると、取り上げた赤ん坊は口を開いていなかった。

 では、この産声は? 出所をたどった私は凍り付いた。

 大口を開けた妻。産声はそこから間断なく響いていた。

 慌てて赤ん坊を見返す。今度は小さな口は開いており、弱々しいうめき声が漏れていた。

「ふぁふぁふぁふぁふふぁふぁ……」

 全身が粟立つ。その声は、私の耳にこう聞こえた。

 ――あなた助けて。

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