31、焦げたタウン誌 (1/29:タウン情報の日)

 火事が起きた部屋で発見された、女性の他殺体。その手には、丸めた分厚いタウン情報誌がきつく握り締められていた。

「この中に、きっと犯人の手掛かりがある」

 あまりにきつく握られていたため回収できず、仕方なく犯人は放火を装って焼却しようとした。けれど火の回りが弱く、完全に隠滅することができなかった――それが没川ぼつがわ警部の見立てだった。

 だが、その情報誌は焦げがひどく、何か描き込まれていたとしても判別は不可能だった。捜査陣に失意が広がる。

 が、問題はあっさり解決した。

 事情聴取のため呼んだ、被害者の恋人。その顔を見た警部は得心した。

 彼の右目は円形の痣で縁どられていた。ちょうど丸めたタウン誌で思い切り突かれたように。

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