16、出席 (12/28:ディスクジョッキーの日)

「それでは出席を取ります」

 単調な声がイヤホンから流れてくる。

「秋月」

 少しの空白。

「井山」

 その風変わりなネットラジオ番組を見つけたのは偶然だった。

 内容は簡単だ。一時間、ただ出席を取るだけ。呼ばれる名前は「あ」から順に五十音一つずつ、それぞれ毎回違っている。「わ」まで終わると、以降はノイズ交じりの空白になっていた。

 気味が悪かった。意味も分からない。けれど、いつしか私はこの番組にのめり込んでいった。仕事をくびになり神経が参っていたのもあるかもしれない。

 いつか自分の名前が呼ばれる。そうすれば何かが変わる――そんな確信だけが私の支えになっていた。

「葉山」

 次だ。

 脂ぎった髪を手櫛に整え、私はその時を待った。

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