9、バー『サウスポール』 (12/14:南極の日)

 A君は散歩に出かけました。北へ2キロ、東へ2キロ、南へ2キロ行くと出発地点に戻りました。さて、A君はどこにいるでしょう?

「南極点、だろう」

 私の答えに、マスターは満足げに頷いた。

 たまたま立ち寄ったバー、『サウスポール』。店名の由来を尋ねる私にマスターが出したのが冒頭のクイズだった。

「知らず戻ってきてしまう場所――そんな意味を込めました」

「成程ね」

 数刻後、私は店を出た。表は吹雪だった。コートの前を掻き寄せる。

「南極よりはましか」

 独り言ち、家路へ着いた。

「……あれ?」

 気がつくと、私はドアの前にいた。横にはつい先ほど見た看板。

 恐る恐る開けると、カウンター奥でマスターがにっと笑った。

「いらっしゃいませ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る