裏切りのあさり

七瀬コタ

第1話

『ねぇどうする?』

『どうするっていわれても』

『ボクたち、もう古いってこと?』

『おはらいばこだよ』

『えー、やだぁ』

『そもそもあの山岸とかいうブチョーのせいだ。アイツが黒幕なんだよ』



        ※※※※



 川原ナツメは株式会社赤いきつねで働く新入社員。幼少期から赤いきつねを食べて大きくなったと言っても過言ではないというナツメは、ここで働くことをずっと夢見てきた。時々お尻がムズムズするのは、シッポが生えてくるからだと本気で心配している。

「川原。これコピー頼む。会議資料だからホチキスで留めて人数分な」

「わかりました」

 胸には赤いきつねのイラストがあるネームバッチ。ナツメは誰かと向き合うたび楽しそうに揺れるこの赤いきつねについ目がいってしまい、改めてこの会社に入れたことに充実感を覚える。

 コピー機には先輩の高田がいた。細い腰をくねらせ、紙の補充を行っている。

「あら、川原さんもコピー?」

「はい」

「悪いけど保管室からコピー用紙3冊くらい持ってきてもらえる?」

「はい。わかりました」

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