第9話

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すずが会長と娘を呼んだのでやってきた。娘[ベイルートが完成したようですね。][1週間後に真田さんが1番腕にいいシェフを用意させておくということですので行きますか。]


[当日の10:00にここに来てくだされば2台の車で行きますので一緒に行きますか。それから2泊されると思いますけれどもフォルクローレとチベット音楽の腕利きを呼びますんで2晩はそれでパーティですね。次の日は地中海から少し出てしまいますが、カナリー諸島に行って食事をしてきましょうか。それから最終日はクロアチアの世界遺産にでも行きますか。いかがですか。]


娘[カナリー諸島とは意外でしたね。でも食事がおいしいところで有名ですわ。マデラ酒もあそこら辺の物でしたっけ。][ポルトガル領マデイラ諸島のお酒ですので西にまだ500㎞行ったところです。そのうちに行きましょうかね。]


[今回のレバノン方面の旅行のことで何か質問や意見はありますか、食事の内容についてはすずさんにすべて任せています。この分野は彼女の聖域で私でも口出しができないんです。はっはっはっ。美味しいものを食べることに関しては極めて真剣ですので間違いがないと思いますよ。]


娘[前と同じホテルに3人で2泊の予約を入れて1週間後の10:00にここにお邪魔すればよろしいわけですよね。][ホテルはちゃんと割引料金になっていますか。]娘[それは抜かりありませんですよ。真田さんに言って王室割引の25パーセントにしていただいています。]

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シリアに行く日になったので出発の10分前に会長と娘にいつもの友人の3人がやってきた。

王室専用車の6ドア50,000cc黒塗りが2台と警護に侍従などが待機している。王様一行も早めに準備をしていたので、時間前だが駐車場に出てきた。


[どうもいらっしゃいませ。こちらは小雨混じりですが現地は快晴のようですよ。どうぞお乗りになってください。]

王様一行の車は瞬間移動で直接マリーナのクルーザーに、会長一行はホテルに立ち寄ってからマリーナに来ることになっている。


すず[クルーザに来ると仕事モードがセレブモード切り替わって、夢の世界の始まりですね。]

昴[チヨちゃん、昼食はベイルートでレバノン料理を食べるけれどどんなものが出てくるかな。]チヨ[レバノン料理は世界中で人気がありますけれど、野菜中心の料理が中心ですが基本はアラブ料理ですのでケバブも出てきます。もちろん海のそばなので魚貝もあります。


トルコ料理に似ていますが向こうは煮野菜が中心ですがこちらは生野菜が主体です。ヨーグルトやオリーブオイルも多用しますが、マグレブ料理のように多種類のスパイスを使用するのではなく、少な目の種類でまとめているということです。]


すず[よく勉強をしてきました。合格点です。真田さんが選んだ腕達者ということですので私達用にオリジナルのもので勝負してくるんじゃあないんですかね。例えばシリアでも流行ってきたそうですが普通は羊肉で薄く切ったのを、調味料に漬けて重ねて回転して焼いているらしいですよ。


ドネルケバブですがこれをクジラ肉でやるのがはやっているようです。クジラ肉は適度にサシが入って柔らかい加工肉が一般的らしいですけれどね。あとはグリルをした魚と魚介スープといったところじゃあないんですか。もちろんヨーグルト料理のレバノン特産の水切り塩ヨーグルトのラブネにひよこ豆料理が出てきますかね。]

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会長一行がやってきた。会長[相変わらずこのクルーザーは素晴らしいな。とてもビップな感じになれてとてもこの感じは日本では味わえんわな。][11:30に出ますのでもう少し休憩していてください]娘[世界一の長者のクルーザーで地中海の食べ歩きなんていつも思うのですが映画のワンシーンですね。]


サスケ[時間になりましたので出航します。]マリーナを出てから300メートルぐらい走行して、瞬間移動でベイルート港の300メートル手前からゆっくりとマリーナに入っていった。

着岸予定地に王室専用車2台とレストランの支配人が控えていた。


支配人[どうもいらっしゃいませ。店にご案内をさせていただきます。]港の近くで眺めの良い50席ぐらいのこじんまりとした店だが、内装と植栽の関係はまとまっておりとても上質な雰囲気を醸し出している。


支配人[レバノンはフランスの植民地だった関係でワインは中東随一の品質のものがありますが、ヨントリーさんの150年物の熟成ワインがテスト販売になっていて人気になっていますよ。赤白ございますが。ビールは地元のアルマザとヨントリーです。子供用のジュースはオレンジかザクロジュースです。][ヨントリーの150年物の赤白2本ずつとビールは飲みますか。]長[地元産のものを飲んでみたいです。]

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王様[じゃあそれ1本とジュースは何にするかな。]チヨ[私はザクロがいいです。]昴[ボクもそれでお願いします。]


前菜として小皿料理(メゼ)が素早く3種類づつ運ばれてきた。まずファラフェルと言われるひよこ豆をすり潰して丸めて素揚げして、ヨーグルトソースをかけて野菜で巻いて食べるのだがレバノンの定番メニューだということだ。


次にムサカと呼ばれるトマトに玉ねぎそれにラム肉をくたくたになるまで煮込んだものだ。ギリシャやトルコにも同じものがあるが料理の仕方が微妙に違うらしい。とにかくこちらのものはくたくたに煮込んである。


次に日系人を意識したのか地中海産のタコのレモン汁とガーリックで和えたものが出てきた。そして予想した通りにクジラのドネルケバブとチキンのケバブが出てきて、やっと一心地である。

王様[クジラもこうして食べるとおいしくて、調味液が中東風で何とも言えんな。]

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すず[ヨントリーさんの150年物はおいしいですね。これは値段次第で売れますよ。傘下のジンジンビームは面白いシリーズを投下しましたね。バーボンですけれど独立戦争の1776年に合わせて250年物を177,600円で販売し名前がインディペンデンスで、250年物なんてそれほどないので凄い人気だそうですよ。


続いてリンカーンの160年物を5万5千円で60年物のジョン・エフ・ケネディ3千5百円も出したのですが、どの種類も増産だそうです。全て超能力高速経過年数製法の1年物なんですけれどね。はっはっはっ。]


料理は志野の好きな海鮮スープである。そしてチュニジア風のクスクスと最後にミントティーとメロンである。

[料理は地味だけども味付けはいいな。真田さんが選んだだけはあるぞ。]チヨ[私もそのように思います。合格点には達しています。]すず[だんだんおチビちゃん達も場数を踏んできたから、うるさくなってきましたね。はっはっはっ。]

娘[オアシスの植栽とパリ風の街並みが、独特のエキゾチック感を出して魅力的ですね。シリアの特別区の住居地域の1,500万坪は地中海のセレブ地区という感じですが、こちらの方が親しみがあり落ち着きますね。伸びしろはこちらの方があるように感じますよ。]一行はその後に予定通りにカナリー諸島やクロアチアの世界遺産の中で食事をし、夜はフォルクローレやチベット音楽を堪能した。正三社長がいずれも選りすぐりのミュージシャンを用意したので大満足であった。

王様一行は全ての予定を終了して船橋の夏見に戻った。

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