第45話 女王の独り言と幼い兄妹

ワイングラスの中身は、赤い人の血


彼女の地下の城近くにあるのは 幾つもの火が閉じ込められた氷のツララ

そのツララの中の人から取り出したもの。


「狩りをしなくてはね・・。それとも 罠に獲物が囚われるのを待つ・・

どちらでも いいけど」人の血を飲みながら女王は言葉、独り言を紡ぐ

唇についた 血の雫をまるで 口紅でもひくように そっと自らの唇の上に

延ばす。


大きな赤いルビーの宝石が幾つもはめ込まれた首輪を手に取り

自らの首にかける。


「どうしょうか? またあの憎らしい冬の王が 黙ってはいまい

そろそろ、あれを始末したいものだが・・」


私の宝石を目当てに 盗賊どもが群れをなして、やって来るが

皆 我の餌食・・しかし

やはり、若い女か 愛らしい子供の血が欲しいものよ」


女王の地下王宮の近くの森の雪や氷

雪に包まれた この辺りの森


それは 決して、女王の魔法により溶けない氷雪


天に向かい、突き刺すように出来た2メートル前後の氷のツララの柱群

中には それぞれ 哀れな犠牲者たちが 目を見開き 凍りつき入っている。


「お兄ちゃん」 「!駄目じゃないか ついてきたのか アニス」

二人の幼い子供達


「お兄ちゃん、これは…」妹が問いかける


氷に包まれた恐怖に満ちた顔の男達の死体があった。

その問いかけに小さな兄の方が言葉を返した。

「氷雪(ひょうせつ)の魔女の宝を 狙った者たちの骸(むくろ)さ」


「…お兄ちゃん」「魔女の王宮の近くに 雪の中でしか 咲かない薬草がある

あれが あれば 父さんと母さんの病が治るんだ」まだ幼い子供の兄

「魔女に・・魔女の手下に見つからないようにしないと・・。」

まだ子供、兄の方が言う


氷で出来た豪奢な部屋には 毛皮やペルシャ絨毯が飾りとして

敷き詰められている。


奥のクローゼットには 金や銀 宝石のテイアラや 首飾りや耳飾り

それから 絹織物や刺繍や宝石が縫いこまれた衣装の数々


「祭りの宴が始まったか・・・」笑みを浮かべ 女王は笑う・・。


豪華な衣装を纏い、それに完璧に整った肢体を持つ 美しい顔の女

氷雪の女王

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る