第20話 『アッコン陥落の嘆き』を謡う吟遊詩人2 滅び去る王国で 血の祝祭の中での出来事
滅び去る王国での出来事
そこは戦場
秩序などなく、逃げ惑う人々 哀れな羊の群れに
獣と化した者達は獲物を屠るだけの血まみれの惨劇
血の祝祭で 無慈悲な者達が 小さな獲物達に少年を見つけた。
「お前たち これは、これは 良い獲物じゃないか?」
「奴隷にするか、血の海に沈めるか くくっつ」
剣を血に染めた 数人の兵士 気がついて、近くに来る
「きゃああ」「うわああ」子供達が恐怖で悲鳴を上げた
「ふふ・・本当に『良い獲物』だね
美味しいといいな くすくすっ ねえ、手加減はいらないよね」
呟くように吟遊詩人の少年が不気味な笑顔で言った
まるで風のように飛び去り 瞬間、兵士達の身体の周りを
軽く踊るように舞う
再び、幼い兄妹の近くへと足を降ろして止まり
今度は彼等に危害を加えようとした兵士達が次々と倒れて地に伏せていたのだ
目を見開いたまま 倒れたまま動かなくなる あるいは跡形もなく粉々になる
金色に少年の瞳が輝いている 間違いなく人でなく、魔物の眸(ひとみ)だった
ポタポタと口元の赤い血、少年の口から覗けているのは 小さな牙 吸血鬼の牙
口もとを汚して、犠牲者の血が滴り落ちるのだった
「うん 悪くない味だった
まあ、殺したけど いいよね 戦場だから」指先で口元の汚れを拭い去る
その一瞬の惨劇 血まみれの敵の兵士の死体 子供達、兄妹は言葉もなく
じっと幼い兄妹たち 怯えた表情で 吟遊詩人の少年を見ていた
「・・僕たちも食べてしまうの?
僕は食べていいから、妹のマリアンは助けて お願い!」
妹を後ろの背にして 幼い子供 兄のエドモンドが言う
「お、お兄ちゃん 駄目、駄目」アリアンは涙ぐみながら言う
「怖がらなくていいよ 君たちは祭りの時に 僕の歌を褒めてくれた
それに沢山のお菓子もくれた だから御礼をするから」
魔物で吟遊詩人の少年が腰をかがめて微笑んで言った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます