第5話

そして次の日の朝、また突然に私は叩き起こされ、


「引っ越すぞ!!」


マモルが再び衝撃発表を伝え、その夜には遥か西の知らない都会のマンションの一室、布団しか無い空っぽで不思議と落ち着くリビングの真ん中で、マモルを中心に三人で川の字に並んで毛布にくるまっていた。


「ナナ……いや、マモル、って……本当はこんな感じのキャラだったの……?」


何もかもが勢い任せのようなマモルに驚きを隠せずに、つぶやくように私が尋ねると、


「あぁ!

なんかすごいお父さんらしいだろ!?

そこらの男より男らしいだろ!?」


「まぁ元々あたしと二人でいる時はこんな感じだったんだけどねぇ、外見も揃ったらいよいよ我慢できなくなったみたい」


二人が同時に答え、顔を見合わせて笑うとまたキスをした。


「っていうか……アカリはどういう感覚なの……?

前の結婚相手は普通の男でしょ……?

でもマモル……は……ずっと女だったわけで……」


私の前でのスキンシップは元々多い方だったが、マモルはそれもいよいよ我慢できなくなったらしく、私が喋っている間にもさらに何度かキスをした。


「うぅーん、だから、元々あたしといる時は昔からこんな感じだったのよ。

あたしもそれであんまり違和感も無くて、むしろだんだんナナの体が女の子になっていくことに違和感を覚えてたわ。

だから、今はとってもしっくり来る気持ち。

やっとマモルに戻れたんだって。

生まれた時からずっとナナという別の自分の着ぐるみを着せられてたんだものね」


「あぁ、ずいぶん重い着ぐるみだったな。

やっと脱げて、身も心も軽い軽い。

これでミキも安心して学校行けるしな」


「……?

私のせい……?

私を学校に行かせるために、わざわざ苦しい手術までして引っ越しまでして……?」


背を向けてそうつぶやいた私を、背後からマモルが強く抱き締めてきた。


「さっきから言ってるだろ?

生まれた時からずっと、なんだよ。

俺は男で、なのにずっと女の着ぐるみを着せられてたんだ。

これが本来のあるべき姿なんだよ。

これは俺が望んだことで、お前のせいなんかじゃない。

むしろお前のおかげと言うべきなんだ。

お前のおかげで、やっと俺も本気で闘う決心がついた。

ありがとな。

やっと堂々と自分をミキの父親だって言うことができる。

おっと、もちろんその前に、アカリの夫でもあるけどな」


そう言って私を抱き締めながら首だけ振り返ると、またマモルとアカリはキスをした。





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