7、七歳

 あれから三年の月日が流れ、俺は七歳の誕生日を迎えた。


 朝、いつもに比べて体が軽い。

 それに、この湧きやがる力。

 自分が七歳になったことを実感した。

 久々に感じるこの感覚。

 何とも言えないが、とても気持ちい。


 力の開放、この世界に生まれた者に掛けられた枷。

 その枷が七歳になった日に解けるのである。

 これは五百年前と変わらない。


 これで、今現状での全力の力を出せる。

 それに、魔力に関してはかなり高いようにも感じる。

 流石に前世である賢者の力をある程度、引き継いでいるだけはある。

 後は、筋力などがどうかだ。

 体は、この三年間である程度鍛えてきた。

 その成果がどれほどのものか早く試したい。


 そんなことを考えながら、ベットを降りて着替えをしていると、


「おはよう! サージ。今日で七歳だね」


 レイクが部屋へとやって来た。

 いつものように爽やかで優しい兄さん。

 三年前と比べて、背もかなり伸びている。

 今年で十歳になるレイクは、村でも有名なイケメンで、既に婚約の申し出がかなり来ているとか。

 ガイルと違い剣術の方は全くなレイクだが、火と風の魔法、それに回復魔法を扱うことの出来る兄さんは、村の自警団に所属し、かなり活躍をしていると聞いている。

 来年には王都にある勇者学園に入学するらしい。

 レイクなら問題なく入学できると思う。


「おはよう! レイク兄さん。うん、そうだね。やっとだよ」

「もうすぐ朝食の準備が出来るから早く降りておいで」

「分かっよ」


 それだけ言って兄さんは一階へと降りていく。

 俺は着替え終わると下へと降りる。


「起きたかサージ」


 父が声を掛けてくれた。


「はい! 父様、おはようございます」


 一言挨拶をする。


「お前も今日で七歳だな」

「そうですね」


 一言返す。


 それから俺達家族は食卓に着く。

 朝食が始まると、皆無言である。


 が、


「無能が七歳か。七歳になっても無能は何も変わらないな」


 ガイルは俺が腰に下げている本を見て言ってくる。

 この三年で何も変わらなかったガイル。

 毎日のように俺に嫌味を言ってきている。

 毎日のようにそれを無視し続けているが、そろそろうざくなってきた。


「やめなさい。朝食中だぞ!」

「ですが父様! こいつ七歳になっても何も変わっておりません。三年間の間、父様があれほど剣を教えられたのに、無能の白本のままです!」


 こいつはバカか!


 思わず口に出しそうになったが、何とか堪えて心の中で突っ込んだ。

 本の色は、生まれた時点で決まっている。

 俺は少し違うが七歳になったからと言ってそれが覆ることはない。

 何をしようとだ。

 それがこの世界の常識であり、当たり前。

 そんなことも分かっていないのか。


「何を言っているんだ! 本の色が変わることなどあるわけないだろう。それはこの世界では常識だぞ」

「知っております。だから僕はこいつのことを無能だと言っているのです」


 流石にそろそろ限界だな。


「父様、一ついいでしょうか」

「話に割り込むな。今は僕が父様と話しているんだ! 静かにしていろ!」

「ガルドは黙っておきなさい! それでサージ、何かな」

「はい! せっかく僕も七歳になりましたので、ガルド兄さんと模擬戦をさせていただけないでしょうか!」

「お前が俺と模擬戦んだ! ふざけているのか!」

「ふざけてなどおりません。純粋に兄さんの力を分かった上で言っているのです」

「はぁ~あ! お前が俺の力を分かっているだと、笑わせるなよ。無能の白本が! お前はこの家に生まれたこと自体が罪なんだよ。本当に無能でバカなんだなお前は。いいぜ! やってやるよ! 村じゃぁ父様の次に実力があると言われているこの俺がな」


 確かにガルドこの三年で実力をかなり伸ばしている。

 剣のスキルも中級まで使えるようになった。

 この家を継ぐため勇者学院へは行かなかったが、その代わりに父より剣術を学び、実力を着実に伸ばしてきた。

 ただしそれは剣だけの話だ。

 それ以外は何もできない。

 それにその実力も村ではという程度のレベル。


 毎日のように一緒に父から剣を学び、父と模擬戦をしているのを毎日見てきた。

 ガルドの力は十分分かっている。

 負けるはずがないと言うことも。

 それに、そろそろ父に心配を掛けないようにしたい。


「知っているよ。ガイル兄さんの実力がこの村の中で二番目だってね。でもそれはこの村ではって話でしょ。ガルド兄さんは胃の中の蛙なんだよ」

「な、何を言ってやがる。無能で何の力もない弟が、この俺にそんな口をきいていいと思っているのか」

「うん。だって僕、兄さんより強いもん」

「そうか。よ~く分かった。もう二度とその減らず口を叩けないようにしてやる」

「楽しみにしているよ」


 俺とガルドは睨み合い、火花を散らしていた。


「二人ともやめなよ。父様の前だよ」


 レイクが止めに入る。


「二人の気持ちはよ~く分かった」

「父様も二人を止めてよ!」

「いや、二人の好きにしたらいいだろう。その模擬戦の審判はわしがしよう。それとレイクも見ておきなさい」

「分かりました」


 レイクは引き下がる。

 朝食を食べ終えた俺達は庭へと出るのであった。

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