最強賢者のRe:スタート~魔法を極めた賢者は、転生して最強の勇者を目指します~

夢見叶

1 最強を目指して転生する

 この世界を救った俺達、勇者パーティー四人は、国から祝福してもらった。


 世界を我が物にしようとした魔人王を封印し、世界に平和をもたらしたことで、国王より褒美をもらったのだ。


 戦いは厳しいものであったが、この四人だからこそ封印することが出来た。俺は、そう信じている。


 最強の剣士、勇者と呼ばれた男――グレイス=アルベノク。全ての武器を扱うことの出来る本の持ち主として勇者に選ばれた。


 聖女と呼ばれ、回復魔法を使う――ミーナ=シュクベル。あらゆる者を一瞬で治すことが出来、彼女がいなかったら今頃死んでいたのではないかと思う。


 守護神と呼ばれた男――グリーン=フェンラー。あらゆる攻撃から俺達を守り、勇者パーティーを勝利に導いた。


 そして、ありとあらゆる魔法を使う賢者と呼ばれていたのが、俺――サージ=ゲールである。全ての魔法を使える虹色の本の持ち主である。


 本とは、この世界に生まれた者すべてが持つ物で、その色や厚さでほぼ全てが決まる。

例えば、本の色が赤だとしたら、火の魔法を使える。青だったら水魔法と決まっている。

それ以外にいろいろとあるが、勇者のように魔法以外の本も存在する。

武器のスキルが書かれた本の色は、全て灰色。本の中心に対象の武器がかたどられている。

それと本の厚みだが、厚ければ将来的にかなりの量の魔力を手にすると言われており、薄ければそれほど多くの魔力を持てないとされている。


 この世界は、この本がほぼ全てを決める世界。

ごくまれに色を持たない白色の本を持つ物がいる。

先ほどの説明でもあるように、様々な色が存在するが、白色の本はそれらとは全く違う。

 基本的には無能とされている。

 将来性もなく、期待が持てない。

 努力次第で何者にでもなれるのだが、それを知る者は殆どいない。

 それが故に無能の烙印を押されてしまうのである。


 但し、本でほぼ全てが決まるとは言ったが、努力なしで強くはなれない。

 全ての本には初期に使える魔法やスキルが書かれている。

 これは皆共通だが、そこからいくら努力したかで得られるものが違ってくる。

 努力次第でオリジナル魔法ですら覚える事が可能になる。

 それが故に、同じ本の色と厚みを持つ者でも、使える魔法や保有する魔力量が違ってくるのだ。


 そんな世界で俺は、虹色の本を持って生まれてきた。

 全ての魔法を習得可能な本。

 それを持つがゆえに俺は小さい頃から苦労してきたが、今やっと全てが報われたと確信する。


 これからもこのメンバーで冒険者としてやっていくんだと思っていた。

 そのはずだった。


 なのに、


「俺達これで解散だ」


 勇者パーティーのリーダーである勇者、グレイス=アルベノクから告げられた。

 その言葉に対して、他のパーティーメンバーも反対しない。


「何を言っているんだ! これからもこのメンバーで様々な依頼をこなしていくんじゃなかったのか!」


 俺の言葉に対して、


「俺もあの時はそう考えていたが、俺達も、もう年だろう。そろそろ、今後のことについても考えて行かないとダメだと思ったんだ。ミーナと、グリーンには今回の功績を称えて、国から貴族の地位を与えると話が来ている。俺にもだ。それはお前も同じじゃないのか」


 確かに俺にもその話は国王からきていた。冒険者でいるよりも安定した生活を送れるだろうし、国から貰った報奨金は一生苦労せずに暮らしていける物。もう無理に危険な依頼に行く必要もない。


 だが、


「確かにその話なら俺も王様よりされた。だが……」


 俺が、話そうとすると、他の皆は冷たい目で俺の方を見ている。


「分かるだろう。確かに冒険の日々は楽しかった。だが、自分の年を考えれば分かるだろう。そろそろ自分の家族も欲しい。そうなったら、危険な冒険者の仕事も出来ないんだ」


 他のメンバーもグレイスの言葉にうなずいている。


 俺はそれ以上何も言えず、翌朝、パーティーメンバーに別れを告げずにパーティーを抜けた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 それから数年の月日が流れ、俺には弟子が出来た。


 エルフの少女。長い耳を持ち、きれいな金髪。

 幼さはあるが、将来はかなりきれいになるだろうと思わせる整った顔。

 透き通る声は聴く人皆を虜にする。


「師匠! 見てください」


 小さな小屋の中で魔法の研究をしている俺を呼ぶ。


「どうしたんだ」

「やっと中級魔法を使えるようになりました」


 少女は白い本の持ち主で、出来損ない、無能としてエルフの村を追放。

 その後、どうやってこんな森の中にある小さな小屋のことを知ったのか知らないが、俺の元へ弟子入りに来たというわけだ。

 最初の内は俺も断っていたが、毎日のようにやって来て頭を下げてきた。

 結局少女の根気に負けて弟子入りを許可した。


 白い本は努力次第でどんな魔法でも使えるようになる可能性を持つ。

 ただ、そうなるには血のにじむような努力が必要になる。

 少女は三年間、毎日休まずに修行してきた。

 そのかいあって、今では中級魔法を使えるようになったのだ。


「そうか。よく頑張ったな」

「はい!」


 嬉しそうな少女の顔。三年前では考えられなかった姿である。


 これなら心配はないか。残す物は残したし、教えられることは教えた。


「これなら一人でも生きていけるな」

「え? 師匠何をおっしゃっているのですか?」


 不思議そうな顔をする少女。


 その問いかけに俺は答えない。これはあの日から決めていたことなのだ。


 魔法師として世界最強と呼ばれた俺だったが、弱点もあった。それは近接戦である。

 人並程度に剣は使えたが、スキルを持つ者と戦えば勝てない。

 確かに魔法を駆使すれば倒すことは出来る。

 ただ、魔法を封じる事の出来る相手と対峙した時、俺はなすすべもなくやられるかもしれない。

 まあそんなことはないと思うが。

 だが、剣のスキルを持っていればもっと戦闘の幅は広がる。

 それに、あの魔人王との戦い、俺たちは封印しかできなかった。

 もっと自分に力があればとも思った。そうであれば倒すことも出来ただろう。

 だから俺は最強めざし転生することを決めたのだ。


 俺は、本に魔力を流してある魔法を発動する。

 ぶっつけ本番。

 だがきっと成功する。


 最後に、


「もしも未来の世界で君にもう一度会えることを願っているよ」


 それだけ言って俺は消えた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ほぎゃ~!」


 俺は転生して、赤ん坊として新たな生を受けた。

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