さるかにわらいばなし
叶川史
1ネタ目「十回クイズ」
とある東京のショッピングモール。屋上のイベントブースで、一組のお笑いコンビがステージに上がっていた。
「どーもー、猿井です」
「蟹澤です」
「サルと、カニで、サルカニでーす」
「よろしくおねがいしまーす」
サル「元気モリモリで、やっていきましょうね」
カニ「がんばっていきましょう!」
サル「突然だけどさぁ、画期的なクイズを思いついたんだけど」
カニ「ほぉ、画期的なクイズ。どんなの?」
サル「名付けて、十回クイズ!」
カニ「あるある、あるよ!
サル「そうなの? でも君の知ってる十回クイズと、俺の開発した十回クイズは違うかもしれないから、ちょっとやってみてよ」
カニ「はぁ……そこまで言うならやってみますけど……」
サル「それでは参りましょう! 猿井哲也の、十回クイーズっ! ででんっ!」
カニ「感情の起伏がスゴイな」
サル「第一問! 『シャンデリア』と十回言ってみてください!」
カニ「えー、シャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリア」
サル「一八〇〇年ごろにイギリスで流行った『ネズミ早殺し競争』に使用されたテリア犬の名前は?」
カニ「なんて?! いやいやいやわからんわからん!」
サル「はやくはやく答えて!」
カニ「えー、よ、ヨークシャーテリア?」
サル「ぶーっ! 正解はマンチェスターテリアでしたー! やーい引っ掛かったー!」
カニ「違う違う違う! 引っかかってないのよ!」
サル「な? 君の知ってる十回クイズとは違ったろ?」
カニ「似て非なってはいたけど! 完全なるパクリなのよ! 十回クイズの皮をかぶった雑学クイズなのよ! 今のってシャンデリアって十回言わせて、『毒りんごを食べたのは?』って質問するやつだから!」
サル「そんなの、シンデレラに決まってるじゃん」
カニ「いや引っ掛かってる! なんでシャンデリア言ってないのに引っ掛かってんだよ! 毒りんご食べたのは白雪姫だから!」
サル「…………うわっ! てめーやりやがったな!」
カニ「よくキレられるね?! 十回クイズで引っかかったにしてもそんなキレる人いないよ!」
サル「ちくしょー! でも要領はわかった! もう一問だけ付き合ってくれ!」
カニ「はいはいいいですよ。どうぞ」
サル「それではみなさんお待たせいたしました! サルイテツヤの、十回クーイズ! シーズン2!」
カニ「たった一問で季節超えるのかよ」
サル「炙りカルビと十回言ってください!」
カニ「あれ? 知らないのが来たな……炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカブリ炙りカブリ炙りカブリ炙りカブリ炙りカブリ」
サル「……蟹澤さん、途中から炙りカブリって言ってましたよ。よって失格!」
カニ「うわー本当だ! くっそー!!……いやクイズは?!」
サル「な? 君の知らないやつだったろ?」
カニ「もうクイズ関係ねぇよ! いい加減にしろ」
サルカニ「「どうも、ありがとうございましたー」」
頭を下げ、まばらな拍手に送られながらステージから降りる二人。
結成一年目。猿井哲也と蟹澤信二のコンビ「サルカニ」。
彼らが売れるのは、いったいいつになることやら……。
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