頭蓋骨に咲く花

愛嬌

第1話 恋と殺意と花言葉

いつも見る夢をみた。見知らぬ道を歩き。君と会う夢を。君はどんな人なのだろうか、いつも夢の中で会う君に魅了される。君はどんな花を咲かすのだろうか。ただそれが気になって、君を殺した。何度も君を殺した。そんな日々が続く中で君の事が好きなのが分かった。君の頭蓋骨を覗き込む瞬間、目が覚めてしまう。体がフラっと揺れて目を見開く。目から涙が零れ落ちる。「また、か。」体を布団から起こし、窓を開けた。鳥の鳴く声が吹いてくる。春の声が僕のため息を咲かす。「はあ、憂鬱だ。」


開け切った窓から流れる冷たい風が体を吹き抜ける。「、、、寒。」窓を閉め。キッチンまで降りて朝食の支度をする。椅子に座り。朝食に手を付ける。肌寒い足元を両足でさすりながら「今日は、どうするか。」一人呟く(昨日。高校の卒業式を終え、特にやることがない。いつも通り朝食を作ってみたが、あっけなく食べ終わり行き詰ってしまった。他の人の場合、高校を卒業したら大学へ進学。もしくは就職と言う所だろうが、大学に進学するつもりも無し。職に就く意思もなし。死んだ家族の遺産をやり繰りしながら生きようと考えていたが。)「ニートと言うのは案外やることが無くて暇なんだな。ニート生活一日目でねをあげたくなってしまった。」独り言を呟き橋を置いた。静けたリビングの中で窓から指す光を眺めた。(ああ、いい天気だな。、、やることないし)「散歩でもするか。」一瞬にして寝間着を脱ぎ私服に着替へ外を歩く。冬が終わり、春の風が靄りとした気持ちを持ってくる。憂鬱な気持ちだけを握りしめながらいつもの通りを歩いて行く。学生気分が終わり、社会に飛び立つ季節。桜が散り朝日が照らす道を歩き、学生の頃のように、このまま学校に行きたい。気持ちも、今はもう桜の葉と共に散りゆく感情と化していく。学校の友人は何処へ消えていったのだろうか。いつも通っていた下校道を歩きながら、木草が揺れる姿を見ていると。分かれ道を見つけた。もやりとした気持ちがこみ上げてくる。(なんだ。この道、こんな場所に分かれ道なんてあったかな。)懐かしさは感じるけれども実際に行ったことがない道。フと頭を包むもやりとした感情が晴れ鮮明に思い出す。そう、夢のなかで君と会う道。「もしかして。いつも夢で見る、あの場所…」気持ちだけが小走りをする足で小綺麗な土道を歩んで行く。強い風が吹き、桜の葉が目に被さるように横切る。驚きの余り瞼を閉じて見開くと。満開の桜が道を作るように並ぶ絶景。そんな中綺麗な立ち姿をした君が目の前にいた。髪は少し長めのボブ。身長は150センチほど。青い目をした、いつも夢で会う君に。「ね、ねえ!。」驚きと嬉しさのあまり話しかけてしまった。少しの間。空気が鎮まる。「どうしましたか?」彼女は微笑みながら問い返す。夢で見た風景がデジャブのように頭を横切る。僕は、夢で言った事と全く同じ言葉を放つ。「綺麗な目ですね。」薄っすらと微笑みかける君。「ありがとうございます。」ああ。僕はこの日の為に生きてた。そう思えるほど君に恋をした。いつまでも続くありきたりな人生。でも。君と会って、変わったような気がした。いつまでも散り続けていた桜は、いつの間にか散るのをやめていた。


「あの。」変わらない表情を向ける彼女に告白した。今まで夢でしか会えなかった君に言いたかった言葉。「好きです。」間が開き彼女は口を開いた「えっ。…いきなり、ですね。」慌てながら照れくさそうにする君はやっぱり。綺麗だ。「はじめて会ったばっかりなのに…。」うつむき小さくなった声になる。その言葉にに対して僕は、寂しさを感じた。(初めてじゃないんだ。夢の中で僕たちはいつも。)分かるわけもない。理解できる訳がない。そう決めつけて僕は、少し空いた口を握りしめるように閉じた。「そ、そうですよね。初めて会ったばかりですもんね。でも。本当に好きになったんです。一目惚れです、でも。この世で一番あなたを愛せる自身があります。僕と、お付き合いしてください!!」(はは、何言ってんだ俺。会って早々告白って。彼女も困るだろう。冷静じゃないな俺。)また再度。間が開く。「…わかりました。」「え、ほんとn」僕の言葉を塞ぐように彼女が放つ。「でも。いきなりお付き合いはダメです。まだお互いの事も分かってないんですから。だから最初は友達からで。」綺麗な笑顔を向け細くなった瞼から見える綺麗な青い目に言葉を失った。「、、ん?ダメですか?」問い返す言葉に冷静になり彼女の優しさに涙を流した。表情で泣くのではなく、心が涙を流すような。心に涙が沁み胸が痛くなる。夢では見る事も感じることも出来なかった、彼女の優しさに。呼吸すらも苦しくなるほどの優しが。僕を高ぶらせる。だからこそ、君を殺したい。(君から咲く花はどんな花なんだろうか。)「全然良いです!。友達からよろしくお願いします。!」今日の元気を全て詰め込んだかのような返答に彼女は変わらぬ微笑みを向け続ける。「私の名前は…」彼女は言いかけた言葉を止めるように顔を強ばらせた。息を吸い、言い直す。「私の名前は、無花(いちか)です。」「ぼ、僕の名前は。彼岸花(かきしか)です。」名前を交わした、その瞬間。桜の葉がまた散りだす。止まっていた時間が動き出すように、葉は無花の頬に落ち。無花は髪を耳にかけて、微笑んだ。

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