第3話

だから、気象制御船なんてのも、毎日のように見かける大して珍しいもんでもないだろうに。


人間は、鳥とか飛行機とか、空を飛ぶものに弱過ぎる。


飛んでるぐらいでいちいち興奮すんなっての。


思いつつもつられて空に目を向けると、教室の中央辺りに座る僕からも、その黒い機影がぎりぎり確認できた。


気象制御船は、今から六十年前に初期型の千基が運用を開始し、世界を変えた、らしい。


十六になったばかりの僕にはそんな歴史上のことはよくわからない。


ただとにかく、太陽と海と地形によって生み出される気象というものを、素粒子や反粒子や統一力場なんかを用いて人間の思い通りに操れる巨大装置、ということは知っている。


おかげでこの地球からは気象災害が無くなり、農産物関連の株価は常に安定、長期運用資産として重宝している。


「こらこら、高校生にもなってさわぐな」


言ってる先生も、何やら感慨深げにうなずきながら窓際へと歩み寄り、空に向かって目を細める。


「ほぅ、今日は随分ずいぶんと低い所を飛んでるもんだな。みんな見えるか?あのやりみたいな形をした不思議な飛行物体、まるでUFOみたいだろう」


今どきUFOねぇ……お年寄りはほんとレトロで困る。


なんて結局またあくびをしながら、しかし僕は、なんとなく感じた違和感にそれを噛み殺した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る