サキ

〈サキ〉

 ジャックがあまりにもうるさいので勝手に切らせてもらった。


 さて、警察におっさんのことを通報した私だったが、その後もう一度冷静になってインターホンの画面を見ると、いつの間にかそのおっさんは姿を消していた。恐る恐る玄関を抜けて外に出たが、どこにもいない。よくわからないがとりあえずは安心した。


 警察を呼んでおいて申し訳ないが、私は今、そのまま外に出て地元のカフェに向かっている。もうすぐ子供たちが来てしまうからだ。


 私は、人と交わるのが嫌いだ。中学校時代のことは思い出したくないので今は説明しないが、それがほとんどの原因なのは事実である。

 以来私は高校、大学と、一人でいることを貫いている。元々一人でいる方が好きだったし、何にも縛られず好きなように時間を使えることの素晴らしさもここ数年で実感してきた。


 だから今夜も子供たちに渡すお菓子は用意してないし、それ以前に子供たちに会わないために、こうして家を離れている。でもせっかくハロウィンの夜なんだし、カフェでは一人、ちょっと高いケーキでも食べようかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る