銅銭作りと新たな兵器

1480年の春、江戸城の城下は好景気に沸いている。

昨年の秋から俺は新たに城下へ移転した江戸湊、品川湊などの商人を通じて関東各地のみならず、相模、駿河、遠江から米や麦、粟や稗を買い付け、陸奥の国や出羽、蝦夷を中心に売り捌いていた。


幸い昨年から今年にかけて冬の海が荒れる日が少なく、予想以上に交易が出来た事で、砂金を始め、多くの銅、鉛、毛皮に海産物などが手に入った。

更に蝦夷地を領する蠣崎光広に石炭の存在を教え、採掘させたうえで豊嶋が買い取る事で、石炭を安定的に仕入れ確保する事が出来るようになった。


しかも石炭を使ったストーブを急造で作って送ったら凄く喜んだらしく、蠣崎家でも大型の廻船の建造を始めたらしい。

向こうから交易品を持って来てくれるのは大変助かるので、三浦時高に頼んで春から秋の間だけ三浦家から船大工を数人蝦夷に送って貰った。


今回、利益を上げたのは俺だけではなく、実は豊嶋家に協力した商人達も大きな利を上げていた。

そして湊が活発になれば働き口が増える。

働き口が増えれば人が増え、それに伴い労働者を相手にする商売人が潤う。


俺が運営する公営施設である大衆食堂、酒場、娼館も大盛況で更に俺の元に金が集まり、そしてその金を更に湊の拡張や堤建設、土未開拓地の開拓に使う事でをすることでにより更に労働者が増え、それらを相手にする商人や公営施設が一層のこと潤っているという、経済が好循環する無限ループ状態だ。


因みに今江戸でブームになっている料理は多々あるが、中でも人気なのが、肉ごぼう天うどんとソバだ。夏になれば天ざるソバやうどんもブームになるはずだ。

豚骨ラーメンも作りたいんだが豚が居ない為、鶏ガラスープの醤油ラーメンを開発し、これから投入予定だ。それと害獣の猪はいるので猪の骨で豚骨スープやチャーシューが作れないか試してみたい。

麺類以外も人気だけど、やっぱり麺類は別格だね。


それはさておき、正確には調べきれていないが、昨年の10月から今年の4月までの間に江戸城の城下だけでも人口は2万人近くに達していると思われ、各城の城下町にも商店が立ち並び、新たに開拓された土地を耕す農民も増えた。

江戸城の城下町以外もここまで一気に栄えたのには、偏に各城主に命じて街道の整備を急ピッチで進めさせたのが大きな要因とも言える。

今迄も道はあったけど整備が行き届いていなかったり、曲がりくねっていたりしていたため、最優先で各城を繋ぐ道を極力直線にし道幅も広くして街道と呼べるものにした。

その為、商人なども往来がしやすくなり、江戸城の城下のみならず豊嶋領の各城の城下町も発展した。


何より好景気の一因として大きいのが、陸奥で仕入れた銅を使用して永楽通宝の鋳銭を開始し流通させたのが大きかった。

銅が大量に手に入った為、灰吹き法にて銅から金や銀を取り出した銅を使い、流通量の多い永楽通宝を作ったのだ。

勿論撰銭を行い、ボロボロな鐚銭も一緒に溶かして作り直したので、見た目は質の良い永楽通宝が日々市場に流れている。


いや、決して偽金作りをして利益を上げているのではない!!

元々この時代の一文銭は明から輸入された物を使用していて数にも限りがある。

その証拠に一文銭と言っても永楽通宝以外にも宋銭や私鋳銭など複数の種類が流通しているのだが、銭の流通量が圧倒的に不足していて、商売が盛んな地域を除いてはあまり流通していないのが現状で、陸奥や出羽では物々交換が主流だ。

だから俺が一文銭を量産し市場に流しているのだ。


堺での取引でも普通に使えているし、関東各地にも流通し始めている。

うん、米本位経済から貨幣経済へいずれは切り替えないといけないし、今のうちから貨幣を広めておく必要があるんだ。

だから決して偽造貨幣を作ってあくどい金儲けをしている訳では無い!


因みに専業兵士の募集に応募する者も多く、今では体力試験、筆記試験を行っている。

まあ筆記試験に関しては間者対策兼将来の文官、武官候補を探し出す為でもある。

他地域から来た農民だと言いながら文字が書けたら間者の可能性が高く、既に十数人の間者が捕えられている。

間者が女の子だったら縛ったりして、あんな事やこんな事をして誰の手の者か俺自ら調べたかったが、残念ながら全員男なので風間元重にお任せした。

個人的には間者を送り込んだ相手に若い女の子の間者を送り込めよ!! と言いたい!!


女の子と言えば昨年の12月に成田家から嫁いで来た桔梗が嫁に加わった。

援軍を出してもらう条件として婚姻を承諾したものの、名前や年齢を聞いていなかったので焦ったが、桔梗は15歳の子だった。

どうやら長尾景春の乱が起きる前は、長尾忠景の嫡男、長尾顕忠に嫁ぐ予定となっていたらしいが、乱が始まり成田家が景春に味方した為、婚姻の話が流れていたらしい。

そして乱の最中、急速に所領を拡大した豊嶋家に目を付けて、前々から俺の嫁にしようと企んでいたようだ。


昨年12月の輿入れの際には関東が一時的に静かになっていた事もあり、婚礼には義父である太田道灌、義祖父の道真を始め太田家一門、義父である三浦時高と義弟の高虎、そして今回義父となった成田正等と成田家の一門、そして豊嶋家の一門、重臣が集まった盛大な婚礼…、という名の大宴会が江戸城で執り行われた。

今回確信したのは、皆、絶対に婚礼というのを口実にして、大酒を飲んで騒ぐ為に集まってるという事だ。

酔っ払った家臣を階段から突き落としてみて転生しないか試したくなったよ…、ホント…。


そんな訳で3人になった嫁に今、試作した兵器の説明をしている。

うん、何で嫁に説明してるかって?

それは完成した試作品を風間元重や武石信康等に説明している所を目撃されてしまったからだ。

滑液包炎こと劣化版火炎壺を知らない3人は金属で出来た球状の物に興味を示して、質問攻めにあったので仕方なく説明をしている。


試作兵器はソフトボールを一回り大きくしたぐらいの大きさで銅で出来ており、一か所が飛び出ていてそこに穴が開いている。

中は空洞となっており、そこに小石等を火薬と共に詰め込んで導火線を付ければ即席の手榴弾となる。

勿論手で投げるには大きすぎるのでスリングを使って遠くへ飛ばす。

尚、投石器で飛ばすことを前提に大型化も予定している。


最初は鉄で作りたかったが、鉄より銅の在庫が多いので銅製にした。

鉄は鉄砲や武具、農機具などに使用しており、いくらあっても足りない状況だが、銅は灰吹き法で金と銀を抽出し終わったら、今の所は永楽通宝の材料にしか使い道がなく、余剰在庫となっているからだ。


それにしても何故俺の嫁は活発なんだろう?

合戦には付いて来ようとするし、3人揃って鷹狩とか行ってるし…。


まあよく運動するからか、3人共スレンダーで可愛いから良いんだけどさ。


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