明るい子

でずな

笑顔


 少女の名は佐藤咲。

 中学一年生。

 彼女はとても明るい子だ。

 どんな事にも全力で笑って、泣いて、喜んで。


 表情が豊かなので、彼女を初めて見る人は面白がる。


「何だこいつは?」

 

 と。

 周りに人が寄ってきて咲も嬉しい。


 だが、それはすぐに終わりを告げる。

 周りが咲の明るさが鬱陶しくなったのか、少しづ人がいなっていったのだ。

 そして最後には誰もいなくなっていた。


 その頃からだろうか……。 


 うるさい

 キモい

 近寄るな

 

 様々な悪口を直接的にも間接的にも言われるようになった。


 ある日は、机にマジックで悪口を書かれていたり。

 ある日は、校庭に呼び出されたと思ったら校舎から笑い声が聞こえたり。

 ある日は、内履きが捨てられていたり。

 

 そんな日々が続いた。


 そんな事になっても彼女はやめない。

 否。

 やめられない。


 咲にもその理由は分からない。


 口が勝手に。

 目が勝手に。

 体が勝手に。


 それは誰かに操られてあるかのように。

 それは呪われているかのように。


 やめれない。


 本当は彼女も友達がほしい。

 一緒に話して、笑って、遊びに行って。

 いろんなことをしたい。

 でも、できない。



 ある日、彼女の体は動かせなくなった。

 否。

 動きはする。

 だがそれは、自分ではない誰かが体を動かしている。


 目は見える。

 手の感触がある。

 食べ物の味もわかる。

 だが私は意識だけしかない。


 どうしようもない。

 洗面台の鏡に映る私は今日も全力で笑っていた。


 

 

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明るい子 でずな @Dezuna

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