番外編 偽勇者パーティーの末路
家から逃げ出したミトリは、食べ物をあちこちから盗むことで、何とか飢えることなく生活出来ていた。しかし、それも1ヶ月経てば通用しなくなる。
簡単には食べ物も手に入らなくなり、飢えそうになっていたのだ。
騎士団から逃げるのもそろそろ限界、どうしようもなくなってきた時とある看板を見つける。
「貴方の望み叶えます?」
看板の地図にあった場所に行くと、小さな民家があった。
中に入ると眼鏡をかけた怪しげな男が話しかけてきた。
「おやお客様ですか、本日はどう言ったご用件で?」
「あんた、何でも望みを叶えてくれるんでしょ?」
「何でもではありません。私に叶えられることだけです。私は魔道具で実験をしておりましてね。天才的な発想から色々な物を作ったのですが……これを誰かの為に役立てたいと思いましてね」
「へぇ、それなら私の顔を変えなさい。なるべく美人にね。周りからもてはやされる様な顔にしなさい」
「ほほう……無理ではありませんがいくら払えます?」
「そんな物持ってるわけないでしょう!良いからさっさと顔を変えなさい」
「……お代を払わないのなら、本来願いは聞き受けないことにしておるのですが、丁度試してみたい実験があったのです。宜しいですよ。無料で顔を変えて差し上げます」
「最初からそうしていれば良いのよ」
こうして、謎の魔道具開発者は顔を変えると言う依頼を受けたのだ。
「それではそこのベットに寝転がってください。麻酔をかけますからね……」
ミトリは注射を打ち込まれ、意識を失った。
………………………………
………………
……
「お客さん、お客さん、あ、目が覚めましたか?」
「……ここは?………!?そういえば私は顔を変える実験を………」
「ええお客様。成功しましたよ。鏡で顔を見てみては?」
やった!これで逃亡生活ともおさらばだ。
綺麗な顔で男に寄生する生活を送ってやる。
ベットから飛び降りて鏡を確認する。
すると、そこにあったのは……
「ご、ゴブリン?」
そう、ゴブリンがいたのだ。
「いやァァァァ!何でこんなところにゴブリンが!!!コイツを殺して!早くゥゥゥ!!!」
「ホッホッホッ、なにを仰いますか。それは貴方の顔ですよ?」
「え……」
たしかによく見ると鏡のゴブリンは自分と同じ動きをしている。
「な、何でゴブリンなんかに……」
「おや、貴方が顔を変えたいと言ったのではないですか?」
「ふざけるな!私は美人になりたいと言ったのよ!こんな……こんな気持ち悪いのが私?…嫌よ…………イヤーーー!!!」
「美人ですよ。ゴブリンの中ではね?どうです?いっそこれからゴブリンとして生きていくというのは」
「嫌に決まってるでしょうがァァ!!!早く私を元に戻しなさい!」
「そうは言われましても……もう貴方の元の体はここにはないですよ?」
「はぁ!?どういうことよ!」
「その体の元の持ち主であるゴブリンが貴方の体を手に入れたのですよ。これからは人間としての生を謳歌するとね。ですから、貴方はこれからゴブリンとして生きていくしか道はないのです」
「そんなのできるわけないでしょ!代わりの体でも良いから探しなさよ!」
「生憎今は他の身体がありませんので」
「じゃあ……じゃあ私はどうやって生きていけば良いのよ!」
「おやおや、野生に戻れば良いでしょう?他のゴブリンと仲つむまじく、虫を食べて過ごせば良い」
「そんなの……そんなの耐えられない!」
「まぁ、そういうと思っておりました。これから貴方が一つの契約をしてくださるのなら……人並みの食事や寝床くらいなら約束しますよ?」
「する!するわ!だからせめて人並みの生活を……」
「ホッホッホッ、気が早いですのう。まぁ良いです、ついて来てください」
こうして彼女が連れてこられたのは一つの拷問場だった。
「何よ此処は!気味が悪いわ!人並みの生活はどうしたのよ?」
そう文句を言う彼女の……否、ゴブリンの腕を男は切り下ろした。
「えっ……私の腕……?………イ、イヤァァァァ!!!!!!」
「貴方には実験台になってもらいます。これからどんどん他の魔物の体になってもらいますから、その体ごとの痛み方について教えてください。………と言っても、どうやらゴブリンは人と似た様な感覚でしょうがね」
「ゆ、ゆるじで……おねがいじまず……も、もうわがままいわないがらぁ……」
「遅いですよ。契約は成立していますから」
彼女は誰に知られることもなく、余生を魔物の体として過ごし、実験体としての苦痛を与えられ続ける。
これが偽の勇者パーティーを名乗ったミトリの末路であった……
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