第106話 魔王の正体




僕達はサキュバスを倒した。

それを見て魔王がようやく重い腰を上げた。

そして魔王は斬りかかる。

クリフに……

僕が庇ったお陰で死なずに済んだようだが、受けていたら間違いなく死んでいた。

魔王はネドリアように糸を出して攻撃してくる。

更に、クーデルのような炎まで使ってきた。

その全てを僕は投擲や剣で相殺する。

魔王とは数分間打ち合った。

魔王の攻撃は一撃がとてつもなく重く、今の僕が受けても一瞬倒れそうになるほどだった。


「なんて戦いなの……」


「まったく目で追えないです……」


エルナとクリフはその戦いに参入すら出来なかった。一年半自分たちなりに努力したというのにそれでも無力……

2人はとても耐えられなかった……

ケインは魔王といい勝負をした。

どちらが勝ってもおかしく無いほどに速く重い攻撃を当て続けて、クリフは衝撃波で気を失いそうになっていた。

更に戦いは進み、魔王城はもはや原型を留めてはいなかった。

すると、魔王はエルナに向かってダークレイを放つ。

ケインは縮地でエルナの事を庇った。

いつもなら回復スキルで回復できるはずなのに、ダークレイによる闇が心臓につき刺さっていて抜けない。

このままでは死んでしまう。

エルナは嘆いた。自分はいかに無力なのだ……と。

初めて会った時からケインとは対等の友達であったが、その裏でいつもケインには勝てない。自分に何かあってもケインならなんとかしてくれる。と頼ってしまっていた。

その結果、最終局面で自分を庇ってケインが死にかけている。


「ケイン!ケイン!起きて……ごめんなさい…私のせいで……こんな事に」


「はぁ……気に……すんなよ。この戦いも僕が先走ったせいで起きちまったんだ……僕は…死ぬ……けど、あいつを倒してくれ………」


「そ、そんな……」


「ケインさん!あなたはいつも強敵にあってもどうにかしてきたじゃ無いですか!あなたなら勝てますよね!きっと……」


しかし、エルナが抱くケインの体は既に人の温もりが無くなっていた。

死んだのだ、ケインは。


「ふむ、厄介な者が消えてくれて助かった。これであとは腰抜けと出来損ないの勇者のみか」


「……私は、自分が許せません」


「そう気に病むな少女よ。人生というのは上手く行くことの方が少ない。自分には戦いの才が無かったと今世は諦めて、来世に頼ると良い」


魔王は闇の剣をエレナに向ける。そこから放たれるダークレイによってエレナも殺される……と思ったら、前にクリフが出てきた。

エレナを庇ったのだ。


「クックックッ……本当に愉快な者よのう。民を守るべきである勇者が守られてばかりでは無いか!」


エレナは涙を流す。しかし、泣きはしなかった。


「私に……もっと力があれば!」


エルナの叫びに応えるように光が集まりエレナの中に入っていく……


「な、なんだ!この光は!勇者よ、何をした!」


「分かりません……でも!」


エルナは初めて手に入れたその力をどうするのか本能的に感じて発動する。

光はケインとクリフを包んで、彼等の傷を癒した。生き返ったのだ。


「ガーデンライフ!」


「こ、これが勇者の力……死んですぐとは言え、死者を蘇生させる事ができるとは……」


目を覚ましたケインとクリフはエルナを見ると目を丸くした。


「あれ?僕は死んだ筈じゃ……」


「なんで生きてるんでしょう?」


エルナは笑った。涙ながらに。


「まぁ良いか。あいつを倒そうぜ2人とも」


「「はい!」」



「ふむ……勇者達よ、、中々やるではないか。どうだ?今我の仲間になればこの世界の半分を……」


「なぁ?いい加減その喋り方やめたら?」


ケインはいくらか怒った口調で喋りかける。魔王はさして驚くでもなく少し考え込む。


「いや〜まさかバレてるとは思いませんでしたよ。いつからですか?」


「最近かな。ステータスが上がってきたお陰で精神干渉の効果が弱くなったみたいだ」


「成る程……まぁ、いつかバレるかもとは思ってましたよ」


「その喋り方……そ、そんな筈」


エルナとクリフは考えたく無いようにし始める。

しかし、魔王がその漆黒の兜を外したことで2人ともようやく理解したようだった。



「魔王の正体はお前だったんだな……ガルド!」




「………どこから気づいてたんですか?」


「違和感を感じたのはだとけっこう前からだ。でも確信を得たのはつい最近。闇魔法なんて使えるのは歴代で見ても魔王しかいない。闇魔法とは本来勇者の光魔法と対をなす魔法だからな。しかし、僕達はそれに気付きもしなかった。お前がテクストの精神操作を使って意識出来ないようにしていたんだな?エルナが初めて会った時に様子が変だったのもお前が干渉したからだろう?」



「そうっすよ、一から説明してあげましょうか?」


「ああ」


そして魔王もとい、ガルドは語り始めた。その過去を……


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