冬という季節

どちらにしても病院への道は

どうしても俯きがちになる


父を見送ろうとする中で

我が身の病を嫌でも考える

自分の重ねてきた歳月としつき


冬という季節は人に熟考させる

厳しいけれど思慮深い教師のようだ


雨に打たれ寒風に晒される中で

生きていることの奇跡を思い

いつか誰もが去らねばならぬ哀しみを知る



今年はじめての雪がそっと肩に舞い降りた



……わたしは

この、冬という季節が好きだ



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


◆ ホスピスへ向かう道すがら毎日色々なことを考えました。


 わたし自身も病を抱える身で、もう若いとはいえない歳です。


 夫を亡くした時、わたしはまだ30代、今以上に未熟で気がまわらず、充分な看護ができませんでした。

 祖母の時も母の時でさえ、もっとこうすれば、まだできたことはあったはずなのにと悔いは残ります。遺されたものは誰も、どこかでそう思うのかもしれません。



 昔のあの家族の、わたしは最後のひとりになってしまう。

足元が崩れていくような寂しさでした。

 それでも、これは誰もが通り、誰もが耐えねばならないこと。



 この日、初雪が降りました。肩に頬にと落ちてきた雪は冷たい筈なのに、どこか温かくて、そっと優しい手で撫でられているような気がしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る