サイダー

冷やしたサイダーを

父が飲みたがったのは

シュワシュワとした爽快さで

喉から胸にかけての重苦しさを

流してしまいたかったんだと思う


吸い飲みに入れたサイダー

コクリコクリと喉仏が動いて

数口をゆっくりと飲み込んだあと

ふぅと息を吐いて

父は満足そうに目を閉じる


この、ささやかなる清涼が

父のやまいの苦痛を

束の間でも消してくれますように

また夢と現実の狭間を漂っている

その横顔を見つめながら


わたしは思う


ああ、そうだ


幼い日に飲んだ

あの硝子コップの中の澄んだサイダーは

無数の小さな泡が弾けながら

そういえば身体の隅々までを

確かに清めてくれるようだった



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


◆ 幼い頃に何だったかの病気で入院したことがありました。その時に無性にサイダーが飲みたかったのを覚えています。


 熱っぽさと胸苦しさを炭酸がスッキリさせてくれそうな気がしたのでしょう。お医者様から許可を貰って、母が飲ませてくれたサイダーの美味しかったこと。



 父が吸い飲みに入れたサイダーを美味しそうにコクリコクリと飲んでいたのを今も思い出します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る