第4話 女子力料理と 晴彦の限界



 「今日はボクが晩御飯を作るね」



 ボクたちの食事当番は一週間ごとの交代制なんだけどいつまでも意識してくれない晴彦にイラッときたのでボクの番じゃないけど無理矢理作ることにした。

 お互いに野郎飯と呼ぶような雑なメニューばかりだったけど今日のボクは一味違う。大学の友達からこっそり料理を教わっていたのだ。


 練習通りに料理を進めて…よし!ごはん、お味噌汁、肉じゃが、生姜焼き。

 どうだこのメニュー!ちょっと意識してくれるんじゃないかなって女の子というより母の味メニューだ。オギャれ晴彦。…刀の名前を呼んだみたいになっちゃった。



「どう晴彦、美味しい?」

「めちゃくちゃ美味しい!すごいな古都、マジで美味い!」



 どうしよ。美味しい美味しい言われているだけで満足しちゃう。いや攻め時だ。美味しい料理を作れる女の子は可愛く見えるって友達が言ってたし好機!

 今後はボクが毎日作ってあげるねって言うチャンスだ。



「毎日食べたいくらい美味しいかな?」

「もちろん、こんなに美味しい物が毎日食べられるなら幸せだよ」



 …これ、可愛さアピールじゃなくて誘導尋問プロポーズじゃ?待って待ってそんなつもりは無かったんだ!可愛いって意識してほしかっただけでそれは早いよ。ああ顔が赤くなってきたし言葉が上手く出てこない!



「そ!そっか!美味しくて良かった!」



 全く攻められなかったけど晴彦が美味しそうに食べてくれるのを見てたらそれだけで嬉しかったのでまあ良いや。次の機会は覚悟しておくんだね晴彦。








★晴彦side



 もう限界だ…なんなの?なんで古都最近あんなに可愛くなってきているんだ?


 容姿は可愛いし趣味は相性二重丸で同居していても全然ストレス溜まらなくて楽しいから古都は本当に相性の良い親友だと俺は思っている。その親友が急に可愛くなってきたり女を意識させてくるんだぞ?無理だって、なんだあの可愛い生き物。


 なんとなく前より仕草に目が行くようになったしそれがいちいち可愛いし。いい匂いするなと思ったらその古都の匂いがするシャンプーを俺に渡してくるしなんなのアイツ。しかも新しい匂いを俺の枕にマーキングしやがった。無防備が過ぎる。更に俺の前で平然と寝落ちする。つらい。


 男扱いされたいんだと思っていたけど平然とデートに誘われた。どう反応したらいいんだ?

 タンクトップで出かけようとしたので本気で止める。肩甲骨剥き出しで出かけるとか絶対やめろ。

 どっちの服が似合うかと言われたので女らしさから遠いゴツい方を選んでおいた。これで過剰に意識することもきっと抑えられるだろう。


 ゴツイ迷彩ズボンを履いた古都は服のゴツさで体の華奢さが強調されていて非常に目の毒だった。

 目を逸らしたのが不服だったのかそのズボンは買わなかったのでほっとした。あれとタンクトップで部屋の中で寝落ちされたら本当にどうなっていたかわからない。


 そして手料理が大幅なレベルアップ。勘弁してくれよもう…古都を男扱いして仲良くなったのでそれに関しては間違ってなかったはずだ。だけど同居が一ヶ月になったあたりからだんだん可愛くなってきた。古都に何があったのか…好きな奴でもできたのか?


 古都が誰かの事を好き…?なんか、嫌だな…デートって言ってたしまさか俺の事が好きとか?


 好きな奴にジャンプ台の前にバナナ仕掛けるか?



 いや、それは冗談にしても古都が一ヶ月もの間男として振舞っていたのであまり突っつきたくない話なんだよなぁ…触れないように今まで通り男扱いするのがこの関係を崩さない最適解だよな。


 …いや、でも、古都が俺の事好きだったら超嬉しい…気になる……ちょっとだけ、ほんの少しだけ突いてみるか。

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