女スナイパーは派遣社員⁉

夕哉圭シロー

第1話 今宵はどうする?

①今宵はどうする?

東京都新宿区某所


「配置に就いたか、マンダリン」


「もう、とっくについてるわよ。セットアップも完了してる。それにしても、そのマンダリンってやめてよね。本名みかんだからバレバレじゃない。

普通コードネームってブルーとかブラックとかじゃないの。

カッコいいのにしてよ。」


「悪いなあ、既にカラー系の名前使っちゃってるから仕方ないんだよ。

今はフルーツ系がトレンドになっているんだよ。いちじくとか

よりもいいだろ!」


「でもさあ、あんたのことはなんで店長なの。普通はボスとかじゃないの。」


「今は、組織感出す時代じゃなんだよ。他人に会話を聴かれても、バイトが

シフトを確認してるのかなあって思う位だろ。それにこの辺のエリア俺が担当してるからいいんだよ。それより、そろそろターゲットがエレベーターに

乗ったからそろそろ出てくるぞ、スコープ確認しろよ。」


「もう、出来てるよ。えーーと、出口からどっちに行くんだっけ?」

「東の方向だ。」

「えっ、私から見て右、左?」


「右だ!まったく方角位覚えとけ。ターゲットは紫のスーツを着た、

禿げた50代の太ったおっさんだ。その後ろにお付の若いチンピラが

2名歩いてくるはずだ。」


「あっ、今出てきた。ほんといかにもヤクザの親分って感じね。悪いけど

今回はいただくわよ。」


「よし、予定通り東に進んだ。あと5メートル進んだら、撃て。右側頭部を

狙え。」


「了解、店長。任せて。」


3メートル、2メートル、1メートルと

ターゲットが東に進んで行き、、、


「今だ、撃て!」


ドキュ-ン!


「上手いぞ!!」 

「やーん、また外しちゃったあー。2万円かあ。」


「マンダリン、さすがだな。ほんと、ギリギリ外すの上手いよなあ。他のメンバーは外し過ぎるか、当てちゃうかどっちかだからなあ。」



「もー、こっちは当てにいってるんです、10万貰うために! あっ、やばっ

スコープ越しに目があった。こっちのビルに向かって来るわ。」


「よし、いつも通りM-17バラシて撤収だ。」


通常、スナイパーはターゲットの人物を射殺あるいは、ダメージを与えるものとされてきたが、昨今は、ヤクザ、海外マフィア、半グレ等の抗争は昔と変わらず行われているが、反社への法律の強化やコストの面もあり、

どのグループも本気の抗争はしたくないのが本音だ。

そこに新たな需要が生まれた。外すスナイパーを使い、反目する相手に脅しをかける。しかも直接手をくだしていないのでバレにくく、殺していないので

コストも安く抑えられる。


みかんが、優れている点は3つ。

1つ目は、射撃の技術はハッキリ言って下手くそだが、何故か毎回絶妙な距離

(ギリギリ)で外すしてしまうこと。体より離れた位置で外すのと、

顔の横スレスレで外すのでは恐怖感が天と地程違い、脅しの効果が絶大!


*本人は一応、頭を狙っているのですが。。。


2つ目は、ライフルの組立とバラシが正確で

早い。もちろん組織で最初に組立の研修があるのだが、その時から才能があった。本人曰く、子供の頃お兄さんとラジコンやガンプラで遊んでいた影響で、手先が自然と器用にな様だ。


3つ目はこの後わかります。


みかんは、M-17ライフルを素早くバラし、

通勤につかっているケイトスペードのトートバッグに詰め込んだ。

エレベーターから1階へ向かった。すると、このビルのエントランスで

ターゲットの子分らしき怖い人達がなだれ込んできた。みかんは何食わぬ顔で

すれ違おうとした。その時、


「おい姉ちゃん、ちょっとまて。」


「えっ、はい私ですか?」

(やばーーーーーーい。どうしよう。)


「あんたしか、いないだろ。それより、この辺で怪しい奴見なかったか。」


「いえ、見てません。」

(よかったあ。バレてない。)


「チッ、そうかじゃあいい、行け。」


みかんはやり過ごしてビルを出た。


3つ目は、どう見ても普通のOLにしか見えない所だ。まさかケイトスペードの

トートバッグにライフルが入っているとは誰も思わないだろう。このバッグもみかんはスナイプの報酬で買ったものだ。それ以前は通販で2千円のバッグ

使っていた。


みかんがこの仕事を始めた理由は、

彼氏と別れた。

わたしの良さは日本人では理解されない。

海外ならモテるはず。

せっかくだからイタリアがいい。

お金が必要。

バイトしよう。


派遣の仕事もしているので短時間で稼げる仕事が欲しいとSNSでつぶやいたらこの仕事に繋がった。


第2話につづく。

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