時をかけるキツネと神と天才と

他山小石

第1話


 ついにタイムマシンが完成した。

「じゃあテストをしようか」

「よっしゃやってやるぜ」

 助手は博士の言葉にテンションが上がった。

 博士は天才だった。だが少しだけズレていた。

「何でテストするんですか?」

 博士は手元の赤いカップを差し出す。

「こいつだな」

 30世紀でも大人気の商品赤いきつねだった。

 助手くんはさすがにためらって「これをぶち込む? いいんですか?」

「科学の進歩のためだ」

 お湯を入れてまだ3分しか経っていない。食べないのだろうか?

「博士、なぜコレを選ぶんです」

「フィーリングだ」

 理由などなかった。

 人が入れるかどうかの大きさのタイムマシンボックスに赤いきつねをぶち込む。

「どこに飛ばしますか」

「過去だな、まずは3分前からだ」

 助手がダイヤルをくるくる回していると、そこに島国特有の地震が!

「ちょっとでかいですよ!」

 助手はくるくるとダイヤルを回す。バランスを崩しタイムマシンのスイッチを押す。やっちまった! キュンキュンキュン、もう止められないタイムマシン。本物の天才が作ったんだから正確に作動する。

「やっちまったあああ」

 博士も叫ぶがもう遅い。

「どこに飛ばした?」

 そこに緊急速報が入る。

「ニュースだ? とりあえず見るか」

 3メートル程度のパネルのビジョンが浮かび上がる。

「緊急速報です。ピラミッドからラーの麺が見つかったそうです」

 なんのこっちゃ? である。

「翻訳によると、太陽神ラーが王に送った麺のようです」

 ニュースを見ても意味が分からない。

「助手よ、もしかして」

「座標確認しました。エジプトの、紀元前です」

 ニュースは続く。

「はちみつは腐敗しないという性質で、はちみつに浸けられていた古代文字もはっきり残っているようです。これは……アカイキツネ、だそうです」

 ラー麺じゃない、うどんです。

「突然空からふってきた、赤いカップはすばらしい香りで熱い汁と麺が満たされ、大変美味であったと記録されています。王は赤いカップは太陽神からの贈り物であるとして、ラベル部分を保存させたようです。えー、どう見てもニホンゴですね。why?」

 博士と助手は満足そうに頷いた。

「完食のようだな」

「はい博士」


 世界の謎と秘密を共有し、ちょっとした罪悪感の中で、実験の成功、きつねうどんが無駄にならずに美味しく食べられ喜ぶ博士と助手であった。

 ただし、あとでめちゃくちゃ怒られたそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時をかけるキツネと神と天才と 他山小石 @tayamasan-desu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ