第26話 ロスでは日常茶飯事だぜ!


 「アッハハハ!!! 楽しいわねぇ!!!」

 「久々に苦戦してない気がする」


 シャークウェポンに乗った俺達は、手始めに周りを囲んでいた魔怪獣を一気に、『フカヒレザー』で斬殺した。

 敵が何の抵抗も無くスパッと真っ二つになるのは爽快で、前の戦いでもっと使っとけばよかったと思った。


 「そぉら、死ね!!!」


 40メートルはあろうかという、鉄でできた巨人(恐らくゴーレムの類)を両手で4体まとめて引きずり回した。その後、それぞれ片手で2体ずつ、80メートル級のゴーレムに投げつける。

 すると、激突したゴーレム達は衝撃でバラバラに崩壊した。


 「ジョーズミサイルだ!」


 最初に見たトカゲや、ガリガリさんなどをまとめて吹き飛ばす。

 直撃した魔怪獣はほぼ原形をとどめていなかった。しかし、唯一トカゲだけは原型をとどめていた。しかも、中にはまだ息がある個体までいる。ちょっと頑丈過ぎないか。

 念入ねんいりに踏みつぶしておこう。


 「あ! おい、見ろあれ!」

 「何よ、せっかく……アイツは!?」


 空を見ると、かつて俺達を殺しかけた鳥が、群れをなしている。

 その上、知らない魔怪獣も大勢、一緒に空を飛んでいた。


 「どうするの? 空中戦は流石に面倒よ」

 「そうだな……よし、こいつを試してみよう。怪光線!!!」


 シャークウェポンの人差し指から、謎の怪光線が放たれた。

 迫りくる鳥を筆頭とした空飛ぶ魔怪獣が、何もできず爆散し、死に絶えていくのは正直楽しい。胸がすく思いだ。


 「アイツらゴミみたいに死んでくわ。良いザマね」

 「まあ、リベンジは果たしたな」


 今ので、俺達の周りの魔怪獣は粗方あらかた片付いたのだが……


 「まだまだ多いな」

 「それにデカいし」


 俺達がほふり去ったのは、ほんの氷山の一角に過ぎないようだった。まだ大勢の魔怪獣がロサンゼルスの破壊活動にいそしんでいる。

 その上、光の粒子と共に新手が出現している真っ最中でもある。


 「エネルギーが減ってきたな」

 「戦いながら補給できるでしょ?」

 「確かに……あっ、アンドロマリウス」


 大量の敵に突っ込もうとした時、アンドロマリウスに先を越された。

 アンドロマリウスは、自分の何倍もある魔怪獣の上で器用にバランスを取り、的確に弱点らしき頭を貫いていた。


 「やるわね〜」


 しかし、1人で何匹殺ろうが、焼け石に水。

 すぐさま魔怪獣のおかわりがやってきた。


 「そうだ! お前だぁ!!」

 『ギ、ギェェェェ!?』

 「あら、素敵なモーニングスターね。アンタもいい趣味してるじゃない」

 「いや、俺の趣味じゃねぇよ……」


 ちょうどいい大きさの魔怪獣の頭を、脊髄せきずいごとぶっこ抜いて、それを武器にする。

 思いの外、頑丈な奴だったようで、強いモーニングスター替わりになってくれた。


 「うわっ、危ねっ」

 「チッ、数が多いわね」


 しかし、流石にこの数を2体で相手取るのは無茶だったようで、徐々に近づかれてきた。

 ……そういえば、他のパイロットは何をしているんだ? まさか逃げた訳ではあるまい。

 そう思った時だった。


 ドワオオオオォォォォッッッ!!!


 「何だぁっ!?」

 「爆発!?」


 俺達の近くにいた何匹かの魔怪獣が、まとめて大爆発を起こした。

 勿論、何の前触れもなく爆発した訳ではない。何かが高速で飛来し、それが命中したのだ。


 その何かが飛んできた方向を見ると――


 「ロボット! マックさん達か……って」

 「これは……」


 そこには、3体のロボットが存在した。


 1体目は、少し不格好に見えるものの、とにかく巨大で、重厚な装甲に覆われている。80メートルはある。

 右腕から伸びる巨大な刃は赤熱しており、触れるもの全てを溶かしながら切断するだろう。


 2体目は、やけにスチームパンクな機体だった。70メートル程か。

 一応、現代技術の産物ということで洗練されたデザインなのだが、その洗練しきれなかったであろうパーツが、各所から飛び出ている。

 また、砲身の数がやたらと多い上に、一つひとつがデカい。多分、さっきの爆破はこの機体の仕業だろう。


 3体目に関しては最早ロボットではない!

 見た目も大きさも、バケットホイールエクスカベーターそのものだ。しかも、普通のそれでは考えられない程、高速で動いている。

 魔改造されたバケットホイールエクスカベーターである。


 「何だこの機体達!?」

 「悪ふざけかしら?」


 今日日きょうび、ロボットアニメでも見ないデザインが現実に出できた。

 あれでまともに戦えるのだろうか。正直、かなり不安になってきた。


 『虎鮫タイガーシャーク! 助けに来たぞ!』

 「マックさん。デカい機体に乗ってるんですね!」

 『ああ! このデカブツの名前はヒュージ・ジャンク! 文字通りデカいガラクタだが、戦闘に関してはお墨付きだ!!!』


 デカい奴こと、ヒュージ・ジャンクが、豪快な地響きを立てながら魔怪獣の群れへと突っ込む。

 そして、右腕のブレードで薙ぎ払うだけで、前方の敵を全てバターのように溶かし斬ってしまった。


 後ろから迫りくる魔怪獣には、剛腕で対処する。

 ゴツゴツとしたコブのついた腕で殴り飛ばされた魔怪獣は、全身がひしゃげてしまった。


 ヒュージ・ジャンクは、オードソックスに強いロボットのようだ。

 何となく、パシフィック〇ム味を感じる。もしかしたら、量産型を視野に入れた機体なのかもしれない。


 『マックさんは張り切っているようですね。私も頑張りませんと』

 「ベアトリックスさんは、そのスチームパンクな機体ですか」

 『ええ。この機体はブラストウェーブ。爆風の名を冠するその力……とくとご照覧あれ!』


 ベアトリックスさんの機体、ブラストウェーブの各所に存在する全ての砲身から、大量のミサイルや爆弾が発射された。

 放たれた破壊の嵐は、魔怪獣の群れをロサンゼルスの街並みごと焼き払った。


 中には、運良く生き残った魔怪獣もいた。

 しかし、矢継ぎ早に発射されるミサイルからは逃れられない。弾切れという言葉を知らないこの機体は、文字通り爆風ブラストウェーブにて、破壊の限りを尽くしたのである。


 イギリスが開発した最強の爆弾、グランドスラムらしきものが大量に放たれる姿からは、英国面を感じる。見た目がスチームパンクなのも、それに拍車をかけている要因の1つだ。

 ブラストウェーブの手には指が無いようなので、本当に爆弾やミサイルを放つだけの機体なのかもしれない。戦車とかで良くないか……というのは禁句だろう。


 『……』

 「ジャンプさんは……バケットホイールエクスカベーターですか」

 『……』

 『彼の機体はメガロポリス。その名の通り、重機さ』

 「重機……?」


 メガロポリスの回転機構がうなりを上げる。

 その巨体と馬力で、目につく魔怪獣を軒並みき潰してしまう。

 勿論、それだけにはとどまらないのが凄いところ。


 グチャグチャになった魔怪獣を、さらに回転機構でかき混ぜる。

 すると、その魔怪獣の死骸が、またたく間に近未来的なビルへと変わった。

 一体どんな超技術が使われているんだあの重機……


 ヒュージ・ジャンクとブラストウェーブがリアル系ロボットにかたよってる気がしないでもないが、これはスーパー系に入るのだろうか。

 デカいとはいえ、重機が一番スーパーロボットしてるとか、考えた奴は上質なハーブでもキメてたのだろうか。


 「というか、ロサンゼルスが無茶苦茶になったな」

 「心配しなくていいわよ。ロスでは日常茶飯事だから」


 いや、ロスでも無いレベルだからこうやって俺らが出てんじゃねぇのかよ。

 そもそも、ロスがこんな目にあうのは映画とかの話で……俺がいるのはアニメや漫画とかみたいな世界だったわ。


 『先輩! まだまだ追加が来るぜ!』

 「ん、よし。俺らもやるか」

 「レッツ破壊活動!」


 シャークウェポンのロケットブースターをかし、空を飛ぶ。


 「これが天災だ! シャークトルネード!!!」


 魔怪獣の上空から、シャークトルネードを噴射した。

 竜巻によって巻き上げられた魔怪獣の中には、兵士らしき人間も交じっている。しかし、一般人がいないのは、避難がすでに完了しているからだろう。


 宙に浮いた侵略者共に、狙いを定める。

 この竜巻ごと、一掃してやるのだ。


 「じゃあ、これでトドメね」


 アルルカンが押したボタンは、『ファイアーブレス』。そのまんま、炎の吐息……なのだが、最初の設定温度が絶妙に低いせいで、弱火でじっくりと焼いていく感じの技である。温度は、手動でこちらから上げなければならない。

 何故、アルルカンはこの技を選んだのか。それは、低い火力で異世界の奴らをなぶり殺しにするためだろう。逃げられそうになっても、即座に反応できる位置に陣取っているし。アルルカンはそういう奴だ。


 シャークウェポンのサメの口から、炎が放たれた。

 竜巻は炎すら飲み込み、ファイアーネードと化した……ファイアーネードってなんだ?


 「あっ、攻撃モーションがシャークトルネードの使い回しだ」

 「アハッ! 必死にもがいてるわね、カワイイ~」


 普通にかわいそうだと思った。

 まあ、侵略にきたのは向こう……というか、そもそもアルルカンがシャークウェポンに乗ったのは、元はといえば向こうのせいなので。

 これが因果応報か……いや、向こうはあえて自分達の首を絞める、世界規模の高度なMプレイの可能性が……俺、疲れてんのかな。


 「ん~飽きたわね。殺しましょっと……あら?」

 「どうした?」

 「何か、アタシらの竜巻じゃない竜巻が混じってるんだけど」


 俺は、アルルカンの指した方向を見た。

 そこには、炎の赤ではなく、カラフルに光る竜巻があった。

 さらに、その周辺に新たな魔怪獣が召喚される。


 「まだまだ楽しめそうね」

 「そろそろお腹いっぱいなんだけど」


 俺達は、新たな魔怪獣の軍団と対峙した。



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