17
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充生の部屋で彼女は自分の写真を見つけた。
彼の部屋を掃除しているときのことだ。写真には見覚えがあった。昔、康生が使っていたというドイツ製の古いカメラが家にあって、充生とふたりで植物園に出かけるたびに撮り合っていた。その中の一枚。梅雨明けの頃に撮ったものだ。Aライン(身体にめりはりのない真帆にはよく似合った)のプレーンなワンピース姿で、小さなコンクリート製の象にまたがり、開けっぴろげな笑みを見せいている。彼女にしては珍しく開放的な姿で、自分でも不思議に思えるほどはしゃいでいる。幸福そうな写真だ。
問題は見つけた場所と状況だった。
写真はベッド下の模型雑誌に挟まれていた。掃除器をかけようと雑誌を持ち上げたら、床に滑り落ちた――他の写真と一緒に。
古いポルノ写真。骨董的ヌード。おそらく康生のコレクションだろう。モノクロで、すこし黄みが掛かっている。あちこちに筋が入り、角が千切れているものもある。よくぞまあこんなものを、と彼女は少し感心してしまった。写真の中の女性は白人で、明るい髪の色をしていた。黒っぽいレースの下着を身に着けている(あるいは着けていない)。トップレスの写真もあったし、トップだけ着けた写真もあった。ガーターベルトとストッキングは必須らしく、すべてを脱いでいても、これだけは外していない。これまた骨董的な木製の椅子を使いながら、様々なポーズを取っている。おそらく年齢は二十前後(いまは幾つなのかしら?)。胸は白人にしては普通(80のCと彼女はにらんだ)で、腰がたくましい。胸の頂は控えめな色をしていたが、性毛は驚くほど強く存在を主張している。真帆は他の女性の裸などほとんど見たことがなかったから、ずいぶんと真剣に見入ってしまった。自分の身体と比べて、妙に自信を持ったり、溜息を吐いたり。
使用目的は疑いようもない。そこに一緒にあった自分の写真。彼女は気になって、もう一度自分の姿を点検してみた。なぜ、彼はたくさんの写真の中からこれを選んだのか。
たしかに、Aラインのワンピースは裾が短く、ずいぶんと大胆に腿を見せている。おまけに象にまたがっているものだから、かなり脚が開いてしまっている。膝を寄せるように気を付けてはいるが、腿とワンピースの裾がつくる三角形の小さな陰の奧に、下着の白い色が見えているような気もする。
これかなぁ、と真帆は思った。この一点で彼は選んだのかしら。
見つけた最初はショックだったが、そのうち考えが変わった。要は彼は私を求めているってことなんだ。性的なストーリーを創作する中で、彼はわたしをそこに登場させようとしている。十九の男の子なんだから、そういうのって当たり前のことなんだろう。
真帆は写真を雑誌の中に戻した。開きやすくなっているページがあって、場所はすぐに分かった。彼女は雑誌をそっとベッドの下に戻すと、一通り見回し、落ち度がないか点検してから部屋を出た。
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