大人になりきれない高校生

@nyankoro_mothi

第1話

才能があると思っていた。自分で、自分には才能があると思い込んでいたんだ。


父は不動産を営んでいる。母もとある施設の施設長だ。私は、生まれた時からパッチリとした二重に白い肌。きっと将来は綺麗になると言われていた。小学校にあがり塾に入っていい成績を取る。世間一般で言われる「優等生」だった。中学にあがっても変わることは無い。強いていけば、勉強のレベルが上がったことで自分自身に対するプレッシャーが強くなったことだ。親の期待に応えたい。応えなければいけない。しかしそんな思いとは対照的に年々下がる成績。3年生になった時進路先として選んだのは、市内で3番目の偏差値を誇る進学校だった。勉強時間増やして、睡眠時間を減らして趣味を全て諦めて毎日必死だった。ある日気がついた。私は、何がしたいんだろう、と。親の期待に応えたいだけの一心で今まで取り組んできた。そう思い返した時に自分自身には何も無いことに気がついた。勉強だってそうだ。私よりも優秀な人間などあり溢れている。「あぁ...無駄だったんだ。」次の日、進路変更の手続きをした。情けない、あの時の言葉はまだ耳の奥に残っている。 あの時から2年がたった。私はすっかり勉強に対する気を無くし毎日自己嫌悪と後悔に追われている。

妹がいた。2歳下。可愛い妹だ。顔ももちろんのことファッションセンスやメイク、友人関係、勉強運動、なんでもそつなくこなす才色兼備の妹。私が高校二年生になった今、妹が受験生になった。妹が目指す高校はかつて私が目指していた高校より遥かにレベルが高い所だった。両親だけでなく親戚中が妹に期待をしている。私は空気になった。2年前向けられていたあのキラキラとした視線はすべて妹のものだ。応援していないわけではない。妹のことは大好きだ。ただ、あの時の私のように壊れてしまうのではないか、と思う時がある。無理に笑っているように見えることがある。だからこそ、私が支えたいと思い、勉強を見たりとしては居るが、才能があったと思い込んでいた時の自分を思い出し妹を見ると羨ましさでまた自己嫌悪に陥ってしまう。未だに私は何をしたいのか見つけられない。

周りのステータスも、自分自身の過去の栄光も。今と未来では何の役にも立たない。今の自分が何か出来る気もしない。無力で大嫌いになった自分を殺したいと何度も思ったがそれすら行動に移せない私は今日も生きている。私たち世代はこれから高校を卒業してすぐに成人することになる。大人になんてなりたくないのに。大人になったら何を信じればいいのだろうか。高校生ながらに見つめている大人達の社会は金と権力に支配され、陰湿ないじめやパワハラさえも金や権力でなかったことにできる。こんな夢も希望もない、汚い世界で私に何が出来るのか。いや、やる気すらないんだ。私に希望は無い。早く終わりにしよう。

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